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UXデザイナーとして「エンゲージメント」について考えてみた

ユーザー・エクスペリエンス=UX。
カスタマー・エクスペリエンス=CX。

すっかりよく見るようになりました。
解釈がどうあれ、特にWeb・ITサービス界隈では随分耳慣れた言葉になったと思います。

加えて、「顧客エンゲージメント」「カスタマーエンゲージメント」という言葉。
このところ、デジタルマーケ・DX系セミナー周りでよく見るようになったなあと感じます。

言葉自体は10年以上前にマーケティング界で存在していたと記憶していますが、2000年代にFacebookの「いいね!」や「シェア」によって企業やブランドとの距離が近くなり、共感と繋がりが生まれたことが「エンゲージメント」という概念の浸透に寄与しているそうだ。

仮説を立ててみる

2000年→2020年へ。
2007年のiPhone登場、デジタル回線の高速・大容量化などを経て、人々のデジタルとの付き合い方は一変したと思います。

デジタルを介した情報量が爆発的に増えるなかで、人の嗜好・選択は多様化し、対してモノ自体を作るコストは技術革新によって下がり、ほとんど全てのものに代替品が存在するように。

そこで、
「いまの日本はモノもコトも、必要なものはすでに十分に満たされている」
と仮説を立ててみます。

昭和のような「大量生産・大量消費」の世界はもう来ない

日本の人口状況を見ると、生産年齢人口は1995年をピークに減少に転じ、
総人口も2008年をピークに減少傾向へ(※総務省統計局)。

とするならば、
今の状況で顧客を掴み、ビジネスを続けていくためには
顧客の中に“これが必要”という明確な理由」が必要とされてくるのでは。

そしていまの世の中を見渡し、競合サービスのことを考えれば「デジタル」を無視することは、相対的に難しい。そこから、

デジタル × エンゲージメント が求められているのではないか。

エンゲージメントとは

エンゲージメント=愛着心や思い入れ(byGoogle)。

自分自身の愛着心・思い入れについて見つめてみると、実に即時性のないもの。
時間と、利用・接触機会とともに育つもの。
作成されるものでなく、育て醸成されていくもの。

必要だから買う。好きだから使う

ムダだけど必要、なんてものは嗜好品をはじめいくらでもあって、
好き嫌いの観点に於いては、「なんだかわからないけど好きなんだよねえ」的なケースも含め、
論理的であることはあまり意味を持たない気がします。

そういった「心の醸成」という活動が、重要になってきたのではないでしょうか。

ユーザーとの距離

デジタルの恩恵で、SNSだけでなくnoteやLINEといったオープン系プラットフォームを通じ、ユーザーとの接点は得やすくなったと思われます。

ヘルス・フィットネス系サービス「FiNC」は、LINEのタイムラインをオープンに利用したプロモーション機能で毎日(!)コンテンツを投下し、
およそ3か月で自社アカウントの友だち数を20万人アップさせました。

また今年4月に実施されたコロナ自粛期間についての調査では、
「企業アカウントによるSNSのPR発信で、そのサービスや企業への印象が変わったか」に44%がYesと回答。

しかし、オープン系プラットフォームは接点が持ちやすい分、良くも悪くもユーザーの目に常に触れている。
経済、政治、学問、あらゆる分野のひとがSNSで発信をしていて、
政策にまで影響を及ぼすほどバズ(炎上す)る世の中、もはやユーザーの目を欺く付け焼刃は通用しなくなったと言えます。

エンゲージメント醸成のために

デジタル×エンゲージメントの世界観で顧客を理解することを考えると、
利用履歴や行動データなどの積み上げと、その分析・解釈が必要。
継続的な利用データから傾向を明らかにし、嗜好や不満を発見してサービスを調整していく。
データを活かすための変革として、「DX」が叫ばれていると感じます。

さらには人は変わるものなので、その変化もデータから掴むことが重要。
そのためのデータを集めるためには、1回でも多く使ってもらうことが必要。データだけでは役に立たないが、そもそもデータが無ければユーザーを理解することができないから。

だからこそ、サービス面での「エクスペリエンスの良さ」が問われてくる。
また、「選ぶに値するブランドである」メッセージやコンテンツの発信も必要
な要素。

エクスペリエンスの良さを通じて、データを獲得する機会を一度でも増やし、
より良いエクスペリエンスでエンゲージメントを醸成していく。

ユーザーの中に愛着心を醸成できなければ、価格競争でジリ貧の戦いをするしかない。
ファンなきサービスは、これから厳しい時代となっていく。
そして付け焼刃はバレる(笑)。

企業の行動は見られている。
即時的ではなくても、ユーザーとの強い信頼関係を作るという地道な投資活動が本当に大切になる始まりなのかな、と考えさせられました。


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YURIE OSHIMA
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