鬼に金棒、虎に翼。私たちはもっと飛べる。

昨夜はあまりよく眠れなくて、起きたら目がしょぼしょぼしていた。今日はなるべく早めに仕事を終えよう、早めに寝よう、と思っていた。なのに。

眠るどころかパソコンを引っ張りだし、キーボードを叩いている。

今期の朝ドラ、「虎に翼」を見始めてしまったせいだ。居ても立っても居られない、書かずにはいられない。こんな感覚、いつぶりだろう?

リアルタイムで朝ドラを観たことは、今までの人生で一度もなかった。朝ドラには名作が多いとは聞くけれども、なんとなく自分向けではない気がしていたのだ。だけど「『虎に翼』は観たほうがいい」とまわりの人々が異口同音に唱えるのを聞いて、「それならば」と慌ててAmazonプライムの追っかけ再生で見始めた。


尾野真千子のナレーションから、1話が始まる。

「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分、又は門地により、政治的、経済的、又は社会的関係において差別されない」

憲法をしずかに読み上げる。ただそれだけなのに、胸にくるものがあった。

10代の頃、試験のためにこの一文を暗記したことを思い出す。この言葉たちを「当たり前のことすぎる」と思っていたのだ、当時は。「そりゃそうだろう。てか "もんち" って何?」くらいのことしか頭に浮かんでいなかった。

大人になった今、この一文は当時とまったく違って聞こえる。当たり前であるべきだけど、当たり前ではないこと。かつて当たり前ではなかったこと。今でもまだ、当たり前にはなっていないこと。身に覚えがありすぎる理不尽な出来事の記憶たちが、脳裏をよぎる。令和の今でも、生まれもった性別によって大きく人生は左右される。

「はて?」と不思議がる寅子の前に立ちはだかる壁は、あまりにも大きい。

だけど視聴者の私たちは知っている。主人公の寅子はこれから、土砂降りの中でも飛ぶための翼を手に入れる。私たちも、もっと飛べるのかもしれない。まだ実現されていないことを、半ば諦めていることを、変えられるのかもしれない。そんなふうに思わせてくれる1週目だった。

これから毎朝、この物語と生活きる。いい春になりそうだ。


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片渕 ゆり(ぽんず)
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