自宅の前に大きくはないが花畑がある。
基本的に宿根草のガーデンを目指しているが、なかなか思うように行かない。
去年までは芽吹いていた花が今年はダメだったとか、いらないのに増殖しちゃってどうしようこれとか。
基本的にはブルーとグリーンの寒色系でまとめようと思っているのだが、他所様の庭で揺らいでいた赤いオリエンタルポピーに心惹かれて、3株植えてみた。植えて2年目に花をつけたときは、その鮮やかな花色に目を奪われた。
今年は気候のせいか寒色系の花のつきが遅い中、一本だけ早咲きだったのか大きな赤い花を咲かせた。
ここからは単なるアニヲタの戯言。
「鬼滅の刃」の世界にどっぷりと浸かってもう幾歳。
いい年して今更アニヲタとかどうなのよと自分でも思うところは多々あるが、誰に迷惑かけているわけでもないからいいかなと開き直っている。
「推しは誰?」とよく訊かれる。
殆どの人はきっと柱だったりかまぼこ隊が推しだろう。
ごめん。私の推しは鬼だ。それも鬼の始祖だ。
高慢で傲慢で自信過剰で猜疑心が強くて、そして孤独な ―――。
未だ他の花が咲き誇る前に、一輪だけ咲いた赤いオリエンタルポピーが鬼の始祖のように見えた。
そんなことを娘に言うと
「無惨の花は『青い彼岸花』でしょ?」
と返された。
「青い彼岸花」は彼が完全体になるための手段というだけで、彼を象徴する花じゃない。そもそも、青い彼岸花なんて自然界に存在しない。存在しないものは無視だ、無視。
オリエンタルポピー。和名:鬼罌粟<おにげし>
無惨には赤と黒が似合う。
美しい中に禍々しさを潜めた赤。さしずめ血の色を表す「朱殷」あたりか。
さすがにオリエンタルポピーにその色はないが、和名には「鬼」が入っていて、栽培種でありながら微量な毒を持っている。
もっとも、オリエンタルポピーよりも無惨にふさわしい花は袴鬼罌粟だと思うが、さすがにこれは栽培禁止植物だ。
まるで無惨の血のような花。彼の血だって一種の麻薬のようなものだ。
一般に栽培が禁止されている花だとわかっていても、一度はその深紅の花を見てみたい。見るくらいなら罪には問われないだろう?
今日も風に揺らぎながら庭に咲く鬼罌粟の花――。年を経るごとにそれは大きな株となって、初夏に朱く大きな美しい花を咲かす。
咲いては散り次の季節まで眠るを繰り返す。まるでそれは、彼が真に望んだ「永遠の命」のように。
その花を見るたびに、私は妄想の沼に沈んでいく。