脱炭素にも関わる人権問題 北京五輪外交ボイコットで
(こちらは2021年12月に共同通信社から地方紙向けに配信された「千種ゆり子の空てんき」記事です。共同通信社からは許可を得て、そのままの文章でnoteにも配信しました。内容は最新のものでない場合があります。)
2月の北京五輪をめぐって、米国などが外交ボイコットを表明しました。新疆ウイグル自治区などでの中国の人権侵害が理由として挙げられています。ニュースの見出しだけ見ると選手が五輪に参加しないのかと思いがちですが、政府関係者を派遣しないということで、こういった「グレーなボイコット」は過去に例がないそうです。
選手が参加できない本格的なボイコットはスポーツ界にかなりの痛みを伴います。しかしこのようなグレーなボイコットは痛みが少なく外交的な手法としては新しいもので、今後の米中関係にどのような影響があるのかに注目しています。
実は今回問題とされた新疆ウイグル自治区での人権問題は、私の専門である天気や気候変動、地球温暖化と深く関わっています。政府の2050年脱炭素目標を受けて注目を浴びる太陽光パネル。その主要原材料であるシリコンの生産量の65%が中国(17年時点)、その半分が新疆ウイグル自治区だとされています。 10年代から中国企業は市場で急速にシェアを拡大し、パネルの価格も一気に下がりました。しかしその背後には、新疆ウイグル自治区での強制労働や人権問題が隠れていた可能性があります。
地球温暖化による気象の極端化や気象災害を減らすためには、脱炭素していくことが肝要です。しかしながら、強制労働のような人権侵害はあってはならないことです。
私たちはついつい「安いこと」に高い価値を感じ、飛びつきがちです。しかし今は、製品が私たちの元に届くまでの行程に思いを巡らせ製品を選ぶ「エシカル(倫理的)消費」が求められていて、それがSDGs(持続可能な開発目標)の達成にもつながると思います。(気象予報士、一橋大空手道部女子コーチ)