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大学スポーツが危機に瀕している

(こちらは2021年3月16日に共同通信社から地方紙向けに配信された「千種ゆり子の空てんき」記事です。共同通信社からは許可を得て、そのままの文章でnoteにも配信しました。内容は最新のものでない場合があります。)

二~三月といえば、受験・合格発表シーズン。それは同時に、熾烈な新入生勧誘活動の幕開けでもあります。一人の新入生に対して上級生が十人近く群がり、チラシの渡し合い、声の掛け合い、腕の引っ張り合い。これが例年の姿でした。

一転してコロナ禍の去年の勧誘活動。SNSやZOOMを活用してのオンライン戦線となりましたが、例年通りの入部数とはいかず、苦戦した体育会が多かったようです。この原因について、勧誘側も新入生側も手探り状態だったということが挙げられるでしょう。二年目はオンライン勧誘のノウハウもあるし、うまくいくはず。

いや、本当にそうでしょうか。私は、今年の勧誘もやっぱりうまくいかなかったね、という残念な結果で終わる気がしてなりません。なぜって?ウィズコロナの生活様式が広まるにつれ「人と集まって何かをする」ことを諦める気持ちに拍車がかかっているからです。

スポーツに対しての明確な禁止令は出されていないのですが、どことなく後ろめたい。何より感染のリスクが完全には排除されない。だったら代わりに資格試験の勉強をしてみようとか、環境保護のサークルに入って世の中に良いことをしようとか、そういう学生が増えることが容易に想像できます。

大学スポーツが危機に瀕しています。部活のノウハウの引継ぎを考えると、コロナ前に一年生だった部員が四年生になる頃に、多くの新入生が入部し、通常モードに戻っているのが理想です。そう考えると、あと一年しか猶予がありません。一年後までに、ウィズコロナ時代とはオサラバしなければなりません。誰もが安心して「人と集まってスポーツをする」楽しみを享受できますように。

一橋大学空手道部コーチ・気象予報士 千種ゆり子

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