日本人の「ムラ社会」について
(こちらは2022年6月に共同通信社から地方紙向けに配信された「千種ゆり子の空てんき」記事です。共同通信社からは許可を得て、そのままの文章でnoteにも配信しました。内容は最新のものでない場合があります。)
私は今、東京大学大学院で社会心理学を学んでいます。先日授業で、日本人はアメリカ人に比べて、他者への信頼感が低いという調査結果を学びました。
正確に表現すると、日本人は自分の「内集団」に対する信頼は高いが、「外集団」への信頼は低い、という意味です。
「内集団―外集団」は、「友人―友人以外」という小さなレベルから、「日本―外国」のような大きなスケールの場合もあります。
外集団への信頼が低い理由について、日本は島国で歴史的に外集団との接触が少なかったことが挙げられると思います。
このため外集団との関係構築が苦手な一方、内集団の中での信頼関係を重視する価値観が根付いたと考えています。その現れが、日本の「ムラ社会」です。
私が空手界に感じる「ムラ社会」
私がムラ社会を感じたのは、大学時代、空手の全国大会に出場した時です。
選手のほとんどは子供の時から空手を始めていて、全国大会ともなると幼少期からの見知った顔ぶれが揃います。
そんな中、大学で空手を始め、学外に知人のいない私は異質な存在でした。
大学生からはもちろん、審判からも強権的な態度をとられることがありました。
そこには「空手家コミュニティ」という一種の「ムラ」が存在していたと感じます。
ムラ社会を打破しないと集団は大きくなれない
ムラ社会は、中にいる人にとっては効率の良いシステムです。しかし外部からの新規参入を促し、競技人口やスポンサー資金を増やしたいならば、ムラ社会を打破した方が良いと思います。
東京五輪で空手界は「外集団との接触」を経験しました。パリ五輪には空手が採用されないことがほぼ確実となっている今、元のムラ社会的な空手界に戻るのでしょうか。もっとオープンになっていくのでしょうか。