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新規事業を「誰と創るか」考える|事業構想段階で取り入れるべき「ステークホルダー視点」

こんにちは。渋谷(しぶたに)です。
このnoteでは、NEWhで活用したサービスデザインの思考法や手法を紹介しつつ、”サービスデザインの現場の声”をリアルタイムでお伝えしていきたいと思っています。読んでくださった方が少しでもNEWhのサービスデザインの思考法や手法に興味を持って頂けたら良いな…というお気持ちで書いていきます!

はじめに

「顧客のために」を掲げて始まったサービス開発が、なぜか途中で頓挫してしまう。

サービスデザイナーとして、プロジェクトに関わってきた私がよくお聞きする課題です。その主な原因の一つが、「エンドユーザーだけを見つめすぎる」ということです。エンドユーザーへの提供価値を生み出すための、ステークホルダーとつくる仕組みに持続可能性が無ければ、事業として拡大させていくことができません。また、この仕組みはサービスの実現フェーズで考えるのではなく、構想フェーズなど早い段階で検討するほど、成功の確率が上がるのではないかと思います。

今回は、事業開発における重要な視点として、「ステークホルダー視点」についてお話ししたいと思います。

なぜステークホルダー視点が重要なのか

エンドユーザー視点だけでは不十分

サービスデザイナーが携わる多くの事業開発は、エンドユーザーの課題やニーズから始まります。特に、エンドユーザーがサービスの収益源となる場合、彼らへの提供価値を最優先に考えるのは当然なことでしょう。

しかし、エンドユーザーへの価値提供という一点突破では、事業開発が進まないことがあります。なぜでしょうか?その一つの原因として「ステークホルダーの協力が得られない・うまく機能しない」という問題があります。

逆に言えば、ステークホルダーとの仕組みや協力関係を早期に検討できている事業は成功率が高まるという事が言えるかもしれません。

たとえば「BASE」や「STORES」などのオンラインストア作成サービス。
これらは多くの小規模事業者が利用し、エンドユーザーのニーズに応えるために柔軟なカスタマイズを提供しています。一方で物流や決済システムとの連携を強化することで、事業の成長に成功しています。

また、食品配送サービスの「Oisix」は、エンドユーザーの健康志向に応える一方で、農家や物流パートナーとの関係を深めることで、サービスの品質と持続可能性を確保しています。

これまでの事業開発のステップ

新事業開発において、このようなステークホルダーの具体的な仕組みを検討するタイミングは、プロトタイピングやテストなど、サービスを実現するフェーズで行われることが多かったように思います。(下図参照)

構想からの逆戻りは実際難しい
しかし、実現フェーズで仕組みが「イケてない」と分かっても、事業コンセプトから変えることは難しい。意思決定者と合意している場合は後出しじゃんけんになりかねないですし、その分時間もコストもかかります。

ステークホルダーの課題解決は後手になりがち?
そのため、ステークホルダーの課題対応は後手になりがちです。
例えばコンビニ事業の場合、小売以外の様々なサービス拡充を進めた結果、スタッフの業務負荷が高まり、人手不足になる状況が続いています。
この課題を解決するために、あるコンビニがVRを用いた教育を導入しているという事例がありました。確かにVRにより教育コストは下がりそうですが、根本的な課題である「業務負荷を下げ、無理なく継続できる仕組みにする」には少し時間がかかりそうですね…。

サービス構想段階からステークホルダーの視点を取り入れる

では、具体的にどうすればステークホルダーの視点を適切に取り入れ、新事業開発のメンバーで共通認識を持った上でサービスを構想することができるのでしょうか。

実践している方法の一つが、「プロセス・ジャーニー」です。

「プロセス・ジャーニー」は、オランダのサービスデザインエージェンシー「KOOS」が開発した手法で、カスタマージャーニーとサービスブループリントの間のようなものであり、複数のステークホルダーによるプロセスを可視化するものです。

KOOSのプロセス・ジャーニー

オランダの自治区における公共スペースを管理し、繰り返し使うことのできる持続可能なシステムをつくるというプロジェクトでは、実際にこのプロセス・ジャーニーを使用し「それぞれのステークホルダーのプロセスを適応させ、1つの流れを作り出し、可視化することで、ステークホルダー全員の認識を一致」させることができたと言います。

詳しくはこちらの記事に書かれていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください!https://sdg.neuromagic.com/koos-sustainable-sd/

「プロセス・ジャーニー」を起点にステークホルダーの課題やニーズを洗い出す

「プロセス・ジャーニー」を作成する目的は、各ステークホルダーがサービス実現のために担う役割とフローを可視化することです。
シンプルな構造ですが、まずはプロセス全体を可視化してみることで、ステークホルダーの課題やニーズの仮説を立てることができます。

実際に私が行ったプロジェクトでは、サービスの構想段階でこのプロセス・ジャーニーをステークホルダーに見せ、どのような役割を担ってもらいたいかを説明しました。すると、「これは可能だが、これは難しい」といった具体的なコメントが出てきました。この理由を深掘りすることで、ステークホルダーが業務フローの中で何を気にしているのか、何が課題なのかという気付きを得ることができました。

「プロセス・ジャーニー」はスライド一枚に収まるようにシンプルに作る

プロセス・ジャーニーの作成手順は以下の通りです:

  1. サービスアイデアを構想する

  2. そのサービスを実現するために必要なプロセスを時系列で書き出す

  3. 各プロセスにおいて、誰が何の役割を担うのかを明確にする

  4. そのプロセスに関わる全てのステークホルダーの動きを可視化する

この作業を通じて、「誰が何をすれば、このサービスが成立するのか」を、誰が見てもわかるような形で示します。詳細な作成手順は次回のnoteでお伝えできればと思いますが、大事なことは、作り込みをせず「スライド一枚に収まる」ように書いてみるということです。

ステークホルダー視点がもたらす効果

1. 持続可能な仕組みの構築

ステークホルダーの課題やニーズを考慮した事業構想により、早い段階で持続可能な仕組みを考えることができます。また、各ステークホルダーにとってのメリットが明確になることで、協力を得やすくなります。

2. リスクの早期発見

実現段階で発生しうるリスクや、成功のために乗り越えなければならない重要なファクターを、構想段階で予測し検証方法を考えることができます。

3.意思決定を円滑にする

エンドユーザーだけでなく、ステークホルダーの課題やニーズを踏まえた仕組みを考えることで、コンセプトの戦略や実現ステップに納得感を与えることができます。また、双方にとってメリットのある仕組みを考えることにより、競合他社が真似することの難しい、組織としての強みを構想することにつながります。コンセプトの納得感、仕組みにおける競争優位性は意思決定においても有効なアピールポイントとなるのではないでしょうか。

おわりに

新事業開発の成功には、エンドユーザーとステークホルダー、双方の視点が不可欠です。ステークホルダーの業務フローや課題・ニーズが曖昧なままでは、どんなに素晴らしいアイデアでも実現が困難になってしまいます。

私たちサービスデザイナーの役割は、エンドユーザーの課題解決とステークホルダーの協力を両立させる、バランスの取れた仕組みを構想することです。そのためには、「プロセス・ジャーニー」のような具体的な手法を活用しながら、構想段階からステークホルダーの視点を意識的に取り入れていく必要があると考えます。

新しいサービスを構想する際は、「誰のために」というだけでなく、「誰と共に」作り上げていくのかという視点を持つことで、より実現性の高い、価値あるサービスを生み出すことができるのではないでしょうか。

次回はプロセス・ジャーニーの具体的な作成方法や活用方法についてお伝えできればと思います次回も読んでみたいなと思った方はぜひ「いいね」ボタンをお願いします!


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