天涯孤独
暑い夏の日。もう40年近く前。ひとりで、この一番下の階段に座っていた。
まだ、熱中症なんて言葉はなかったけど、きっと熱中症だったと思う。高熱にうなされ、もう歩けない。
口に入りきれないほど大きくて黒い丸薬を飲まされ、息も絶え絶え・・・お客さん達は現地スタッフに任せるしかない。
中国北京・紫禁城の中、人は少ない。石の感覚は硬い。言葉は分からない。話す気力もない。
天涯孤独・・・って、こんな気分なのかなって思ってた。きっと、この上に座っていた皇帝も天涯孤独だったんじゃないかな・・・って。
小さい頃から、天涯孤独という恐怖が付きまとっていた。両親がいなくなったどうしようと、いつも不安で泣いていた。
でも、北京でも実際は孤独ではなかった。お客さん達は、交代で夜中つきっきりで看病してくれた。
現地スタッフは、薬を調達するのに奔走してくれた。
本当に、ありがたくて申し訳なくて、泣けた。
でも、天涯孤独病は消えない。子供がいても、友人がいても、、両親がいなくなった時点で、私はずっと天涯孤独を背負ってる。
そう思うと早かれ遅かれ、誰でも実際はみんなヒトリ。強くても弱くても、関係ない。
暑い夏がくるたび、思い出すこと。