京都SM官能小説 『縄宵小路』 第21回
第三章「調(しらべ)」其の九
高辻はその言葉を聞くと、微かに笑みを浮かべ間を置いてから続けた。
「では、つけてもらおうか」
私はその言葉を受けてゆっくりと頷いた。そして一度テーブルの紙袋に視線を向けると、また高辻の方を向いた。
「あの・・・どこで着替えればよろしいのでしょうか?」
私は緊張と恥ずかしさで消え入るような声で尋ねた。
「どこで着替えたいのかな?」
不思議そうな表情で高辻が返す。
「え・・・」私は一瞬戸惑ったが、すぐに続けた。
「・・・あの・・・着替えられる場所なら・・・」
高辻は私の言葉を聞くと少し考えるような素振りをしてから口を開いた。
「私が決めていいんだね?」
「・・はい・・」
私は彼の言葉に特に疑いを持たず答えた。
「では、ここで着替えればいい」
相変わらず穏やかな声だった。
当然のような雰囲気で応える彼に始めは驚いたが、同時になぜかその言葉を受け入れている自分に気づいた。そして自分の意思でゆっくりと立ち上がった。
私は胸に抱えたままだったランジェリーをテーブルの上にそっと置いた。
高辻は私を見上げると無言でゆっくりと頷いた。おそらく着替えを促す合図だったのだろう。私は少し躊躇したが、すぐに意を決して着ていた服を脱ぎ始めた。
ダークブルーのワンピースは背中に首から腰にかけてファスナーで締めるタイプのデザインだった。本来一人ではとても脱ぎ着しずらいものだが、長年着用しているのと、私の場合は肩関節が柔らかいのも手伝ってどうにか一人で着脱が可能だった。ただしいつもとは勝手が違う。目の前にしているのは鏡ではなく、自分の雇用主である男性だ。床に向けていた視線を高辻に移す。リラックスした様子でソファにゆったり腰掛けているが、視線は私にしっかりと向けられていた。再び自分の身体を見られることを想像してしまい、じんわりと下半身が熱くなるのを感じた。
左手で肩口からワンピースの襟元を掴みホックを外してから少し引き上げると、今度は右手でファスナーをできるところまで下ろす。今度は逆に左手を下から背中に回してワンピースをお尻の方に少し引き下ろし、右手をファスナーの取手まで届かせるとゆっくりと引き下ろした。
ファスナーが外れ緩くなったワンピースの袖を外そうとした時、今日着けてきたブラが胸元からちらりと見えた。絶対に見られることなどないのにと思いつつも、その日は一番のお気に入りの白いレースの下着のセットを選んでいた。何かの虫の知らせだったのだろうか。高級感は雲泥の差があるが、色も白でなんとなく目の前にあるランジェリーとデザインも似ている気がした。
ワンピースを脱げば私は高辻の前で下着姿になる・・。そんなことを考え緊張ながら左手から順に袖を外した。
ブラと上半身の肌が顕になった。乳房は母乳で張っていたせいもあり、ブラの縁からいやらしく盛り上がり大きな谷間を作っていた。
ワンピースが完全に落ちないように両手で掴んでいたが、高辻の視線が胸のあたり見ているような気がして、右腕で乳房を抱きかかえるように隠した。
高辻はそんな私の姿を観察するように眺めた後言った。
「右手を下ろしてもらえるかな」
私は恥ずかしさで全身が熱くなるのを感じたが、頷いた後その言葉に従いゆっくりと右手を下ろしもう一度ワンピースを掴んだ。
ブラのカップが露わになり、乳房は支えを失い微かに揺れながら左右に少し広がった。
「続けようか」
高辻の声が再び響く。私はまた小さく頷くとゆっくりと屈みながら両手で掴んでいたワンピースを足元まで下ろした。
今度は白いショーツと下半身の肌が顕になる。出産後やや膨よかになった腰回りと、屈んだ時にお尻に食い込んだショーツが気になった。
目の前にあるショーツほどではないが、いま来ているものもややセクシーなデザインだった。恥ずかしくなり両手を重ねるようにして股間の辺りを隠す。
「・・・あの・・・これでよろしいでしょうか?」
私が消え入りそうな声で尋ねると、高辻は満足そうに小さく頷いたあと続ける。
「その手は後ろで組んでごらん」
躊躇いがあったものの言われた通りに両手を後ろに回した。
全身下着だけの姿になり恥ずかしさで頭がくらくらするような感覚だった。
「優里香さん、君は今どんな格好をしている?」
「・・下着・・姿・・です・・」
高辻はまた小さく頷く。そして少し悪戯な表情を浮かべて続けた。
「何故いま君は下着姿になったと思う?」
つづく
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