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【アンチ・ドーピング団体競技者向け】私がTUE申請をした時のことをお話しします

※この記事は、私のブログ「ビキニフィットネスやろうよ!」で公開していた記事を再編集したものです。

こんにちは!ビキニフィットネス競技者Yurikaです。

こんなお悩みを解決できる記事を書きました!

・実際のTUE申請ってどんな感じ?
・TUE申請ってどのくらい時間がかかった?

前回の記事で、「どうしてもドーピング禁止物質を使わないといけない状況になったとき」にどうすればよいのかを説明しました。今回はこの記事の内容を前提に進めていきますので、まだご覧になっていない方は、先にこちらの記事をご覧ください。

それでは、実際に私がTUE申請を行った時のことについて、お話します。


突発性難聴の発症とステロイド治療の開始

✅発症

2022年、シーズン初戦の直後の7/19に「左耳が聞こえづらい」と感じました。特に、男性の低い声が聞こえづらく、水の中にいるような音の聞こえ方をしていました。その時はストレスのせいだ、数日すれば治るだろうと思い放置していました。

しかし、2日後の7/21に、友人との会話の中で突発性難聴の可能性を指摘されました。私は突発性難聴について全く知識がなかったのですが、時間の経過とともに難聴や聴覚を失うリスクが高いことを知り、すぐ病院に行きました。そして検査の結果、突発性難聴と診断されました。

✅治療とTUE申請の方針の決定

突発性難聴の治療は、「プレドニン」というステロイド内服薬によって行われました。プレドニンは糖質コルチコイド(ステロイドホルモン)を含み、体内の炎症を鎮める働きを持ちます。

糖質コルチコイドは競技会時禁止物質であり、競技会時のドーピング検査で検出されると、アンチ・ドーピング違反となります。

糖質コルチコイドの注射使用、経口使用[口腔粘膜(口腔内(頰)、歯肉内、舌下 等)を含む]、経直腸使用はすべて禁止される。

世界アンチ・ドーピング規程「2024禁止表国際基準」P.18

※ただし、外用薬での利用は禁止されていません。

その他の投与経路(吸入、局所投与を含む:歯根管内、皮膚、鼻腔内、眼(目薬)、耳(外用)、肛門周囲)は、製造業者が承認を受けた用量および治療適応内で使用する場合は禁止されない

世界アンチ・ドーピング規程「2024禁止表国際基準」P.18

治療のために、禁止物質を利用せざるをえない場合、本来であれば先にTUE申請を行ってから治療を行うことが求められます。しかし、先に述べた通り、突発性難聴は時間経過により完治が難しくなると言われている病気です。そのため、治療を優先し、遡及的TUE申請を行うことにしました。

このあと、投薬治療を3日間行い、症状は回復しました。

✅2025年に改めて思うこと:TUE申請しなくてもよかった?

この記事を書くにあたり、改めて「禁止表国際基準」を確認しました。当時の治療に使用したプレドニン(糖質コルチコイド)については、競技会時禁止物質になるため、競技会以外のタイミングでは問題なく使用することができます

禁止表を確認すると、糖質コルチコイドの経口摂取でのウォッシュアウト期間(=成分が体外に排出されると推定される期間)は3日とされています。つまり、投与から競技会までに3日より長い期間を設けることができれば、仮に検査をしても違反になるレベルで検出されることは少ないと読み取れます。※ただし、違反レベルで検出されるケースが0ではないと思われるので、TUE付与要件を満たした治療をすることが必要です。

私は「ステロイド=常時禁止物質である"蛋白同化男性化ステロイド薬"」と間違った理解をしていたので、TUE申請が必要だと思い込んでいました。ですが、改めて禁止表を確認すると、今回は「糖質コルチコイドを」「競技会以外のタイミングで」使用していたので申請は不要だったと思われます。

私は、アンチ・ドーピング加盟団体の選手だったので、アンチ・ドーピング講習を複数回受けていましたが、それでも理解が浅かったり、間違って覚えていた部分がありました。各団体が行うアンチ・ドーピング講習を批判するつもりはありませんが、短時間で行われる講習では全てを正しく理解することは難しいのだと思います。選手側としても、ただ講習を受けて満足するのではなく、自分で調べたり、専門家(スポーツファーマシストなど)に相談して、正しく理解をする必要があるのだと思いました。

TUE申請

もしかすると私がTUE申請をする必要はなかったのかもしれませんが、ここからは私が実際にTUE申請を行ったときの話をします。

✅医師に相談したこと

ステロイドの内服が決定した際に、私は以下の内容を医師に伝え、協力をお願いしました。


  • 自身がアンチ・ドーピング加盟団体に登録しているアスリートであること

  • ステロイドの内服が禁止物質に該当すること

  • アンチ・ドーピング機関に書類の提出が必要であること

  • 提出書類には医師が英語で記入する部分があること

  • "治療のために禁止物質の利用が必要である(=それ以外の選択肢がない)"と証明できる書類が必要であること


合わせて、医療従事者向けのアンチ・ドーピング情報サイトもお伝えしました。

書類はアスリート自身が用意する手順になっているため、書類を揃えてから改めて来院することを伝えました。

✅書類の準備と作成

TUE申請の書類は、JADAの公式サイトから最新版をダウンロードし、印刷しました。アスリート自身が記入する部分はすべて記入し、7/23に必要な書類を揃えて病院に行き、書類作成の依頼を行いました。

3日後の7/26に、記載が終わった書類を受け取りました。書類作成費として5,000円支払いました。

✅JADAへの申請と審査

病院で記入してもらった書類はコピーを取り、原本を翌日7/27に指定の住所へ郵送しました。

8/10にJADAから審査結果が郵送で届き、無事にTUE付与(grant)となりました。書類の内容を確認すると、審査は8/2に行われたようでした。

✅TUE付与にかかった時間

私の場合は、書類の郵送から審査結果到着までは15日間となりました。

TUE申請は、原則として大会の30日前までに行う必要があります。書類に不備がある場合はより時間がかかることが考えられるため、TUE申請が必要になった場合は、なるべく早くに申請を行うことを推奨します。

まとめ

  • TUE申請書類の作成には医師の協力が必要であるため、診察時に相談する

  • 申請書類は英語で記入する

  • 検査結果等の書類の添付も必要になる

  • 私が申請を行った際は、郵送→審査結果受け取りまで15日かかった

事前に知っている場合と、そうでない場合では「いざというとき」のストレスが違います。TUE申請について、しっかり理解しておきましょう!


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