Sunday’s Book 7 「愛が遠い時代に生まれて」

★Sunday’s Book★

明日が憂鬱な日曜日に、読んだらほんの少しココロが前向きになれるような
「心の体温が上がる」本をテーマにご紹介します。

<7冊目>
タイトル「四月になれば彼女は」
著者:川村元気


恋愛する人が減って、結婚する人が減って、結婚式をする人が減った。

結婚情報誌ゼクシィは

「結婚しなくても幸せになれるこの時代」と言った。


幸せの象徴は恋人で、幸せのゴールは結婚。

そんな時代は、終わったと思う。


この本の主人公である藤代は1年後の4月、結婚を控えている。

だけど、結婚相手の弥生はふと

「でも…確かに最近ないよね」

と呟く。

「誰かを想って胸が苦しくなったり、眠れないほどに嫉妬したり、そういうこと」


2人の会話は淀みなく進んでいくのに

そこに愛があるのか、愛があるかをどうやって知ればいいのか

どうして彼女を結婚相手に選んだのか

藤代は思い出せない。


そんな時に届く、初めての恋人ハルからの手紙。


誰かを知りたい、人間の深いところに行きたいという欲があまりない藤代が

初めて、そして唯一、心が動いた相手ハル。


ハルからの言葉、ハルと過ごした日々。


人はいつ、私たちはいつ、愛から遠ざかったんだろう。

わたしは簡単に、愛っていいよね、と説教くさく言えないし

愛って大事だよね、と言える分際でもないなーと思う。

私も、愛をさぼったり愛から逃げたりしてしまうから。

愛は面倒だ、と思う。


だけど、本をそっと閉じて、ざわざわと愛について考えた時。

わたしは前の会社を辞めた時のことを思い出した。

わたしが会社を辞めた時、同じグループの先輩たちから

重くて太くて短いペンをもらった。

軽くて細くて長くて書きやすいペンばかりが溢れている世界で

その重みを感じながらゆっくり文字を綴るという行為は

そこに愛がある気がした。


そのペンをもらった時、

そこにはみんなからの激励の言葉が添えられていた。


「愛せない仕事はするな」

「愛される仕事をしろ」



愛は面倒だ。

どこに愛があるか見えないし、気づいたら消えていってしまう。


だけどその重みや心のざわめきを感じることや

その愛を一文字ずつ綴ることも

生きてる、ということなのかもしれない。


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