ゆりいか

自転車と小説とバードウォッチングが好きな人間です。ライターもやってます。 マガジンには、株式会社 NJS日本住宅新聞社で発刊中の業界紙「日本住宅新聞」にて連載されていた書評『ゆりいかの文学住散歩』(2016年12月~2018年3月)の記事を元に再構成したものを掲載しています

ゆりいか

自転車と小説とバードウォッチングが好きな人間です。ライターもやってます。 マガジンには、株式会社 NJS日本住宅新聞社で発刊中の業界紙「日本住宅新聞」にて連載されていた書評『ゆりいかの文学住散歩』(2016年12月~2018年3月)の記事を元に再構成したものを掲載しています

マガジン

  • 屋上百合香のポエムノート

    これはポエムです。 だから、安心してお読みください。

  • ゆりいかの文学住散歩

    日本住宅新聞にて連載されていた書評を一部加筆修正した上で公開していきます。今後、連載内容に沿う新たな記事も出していく予定です。

最近の記事

最近の(8~9月)仕事ふりかえり

ご無沙汰しております。更新したいことは色々ありますが、とりあえず最近の書き物仕事について振り返ります。 cakesというサイトで、海猫沢めろんさんと下田美咲さんの対談の執筆・構成を担当しました。連載形式で今のところ第2回まで発表されています。 これほんと頑張りました。第6回の連載(1記事3000字以上の指定アリ)を一ヶ月で執筆する大変なスケジュール。しかもおふたりが炎上スレスレなテーマを話をあちこち展開しながらトークするので(内容は超おもしろいです)、それをうまくまとめる

    • 『ゴジラ・キング・オブ・モンスターズ』のせいで日常生活がヤバい(※ネタバレなし)

      昨日『ゴジラ・キング・オブ・モンスターズ』を観てきた。泣いた。笑った。良かった。狂ってる。最高。最初の感想はそれしかなかった。頭がぼーっとして、何かを口から吐き出したいという気持ちでいっぱいだった。 ふらふらする頭でエレベーターに乗った。映画を見終えたばかりの人たちで密集してムッとむせ返る室内。不意に全ての電気が消えた。動きも完全に止まって、何人かがざわめきはじめる。すると「ドン…ドン…」と遠くの方から足跡の音が聞こえる。パトカーのサイレン。悲鳴。ガリガリガリといった何

      • 宣伝です。Vの人たちに取材してきました

        本業の方の宣伝です。このたび、一迅社から2月に創刊される雑誌『Pure!』で、インタビュー&構成を担当しました。 今回、取材したのはvtuber! 田中ヒメ、鈴木ヒナ、燦鳥ノム、YuNi(敬称略)の4名です。京王線新宿駅から乗り換えて、バーチャル世界まで取材しに行きました。 vtuberの取材は、にじさんじのいわながちゃんを除くと、今回が初めての取材となります。(いわながちゃんの濃いインタビューも読んで欲しいです) インタビューでは、それぞれのVtuberのアーティスト

        • ときには離婚を考えてみる

          結婚して1年以上が経ったので、離婚について考えようと思う。 こう書くと、すぐにも離婚するように読めてしまうけど、そういうわけじゃない。今の家族生活はかけがえのないものだし、これからも続けていきたいと思っている。 だからこそ、離婚という夫婦関係の終わりを想像して、現状を考えた方がいい気がした。死ぬことを想像するときほど、生きている実感を得られやすいのと同じ理屈で。 僕(あるいは相方)が、不倫や借金、DV、その他さまざまな問題を引き起こし、離婚したとする。同居生活も解消し、

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        • 屋上百合香のポエムノート
          1本
        • ゆりいかの文学住散歩
          8本

        記事

          内田百閒先生をリスペクトして、この先の人生で食べたいものを列記する

          最近、時間があると『ちくま日本文学全集 内田百閒』(筑摩書房)を読んでいる。内田百閒といっても知っている人は少ないかもしれない。夏目漱石の弟子だった作家で、黒澤明監督の遺作となった映画『まあだだよ』のモデルにもなっている。 読んでみると、なんかよく分からない短編が多い。エッセイかなと思ったら急に非現実的な出来事が起こったり、怪奇ホラーかなと思ったら特に何も起こらず終わったりと、掴みどころがないのだ。ただ、夢に出てくるくらいモヤモヤする読後感を残すので、首を傾げながらも読んじ

          内田百閒先生をリスペクトして、この先の人生で食べたいものを列記する

          小説家・菊地秀行先生のスゴさを語りたい

          菊地秀行先生を知らない? 妖魔どものエサになっても構わんというのか…。 いや、つまらないマウンティングは止めよう。大好きな作家なので勝手に語りたくなっただけだ。 菊地秀行先生といえば、みんな大好き奈須きのこ御大が影響を受けた人物だったり、ジャズミュージシャンの菊地成孔のお兄ちゃんだったりするけど、なぜかネットでは先生の作品を解説したものが少ない。 由々しき事態なので、高校時代ページがグチャグチャになるまで愛読した自分が、作品の素晴らしさをざっくり紹介する。読んでた時期の

          小説家・菊地秀行先生のスゴさを語りたい

          世田谷一郎さんというYouTuberが最高って話

          最近はもっぱらYouTubeばかり観ている。Vtuberにハマったのをきっかけに、リアルの料理実況や海釣り動画など、いろんなジャンルを漁るようになった。 ただ残念なことに、いわゆる"YouTuber”といわれる人たちの動画があまり肌に合わない。ちょっと若者たちのテンションについていけないのだ。 だから、ぼーっと観ていられる系の動画をよく探すのだけど、去年、世田谷一郎さんという素敵なYouTuberさんを見つけたので、紹介しようと思う。 世田谷一郎さんは、6年前からYou

          世田谷一郎さんというYouTuberが最高って話

          小林カツ代というすごい人がいたことを忘れてはいけない(その1)

          ここ数年、小林カツ代にハマって、彼女の著作や関連本を読み漁っている。 本屋の料理本コーナーに立ち寄ってはどれくらい彼女の本が並んでいるかをチェックするし、レシピに習って料理を再現するのも趣味になっている。 「小林カツ代って誰?」って人は、これを機会に覚えてほしい。『FGO』であれば☆5サーヴァントで召喚されることは間違いないし『civilization』の指導者キャラになればチート扱いされるだろう。(真面目にいえば、家庭科の教科書に掲載されるくらいの偉業がある人だと思って

          小林カツ代というすごい人がいたことを忘れてはいけない(その1)

          歌舞伎の世界は"異世界モノ”と近いかもしれない

          歌舞伎を観てきたんすよ、歌舞伎。 うちのバーのオーナーから偶然チケットを譲ってもらって、銀座の歌舞伎座で行われた『初春大歌舞伎』っていう演目を約4時間半まるごと。 生で観るのは生まれて初めてだったし、周りはセレブっぽい爺ちゃん婆ちゃんばかりだったんで、場違い感が半端ではなかったけど、めちゃくちゃ面白かった。 上映されたのは、明智光秀がいろいろやらかす『絵本太功記』と、芸者や鳶頭たちが派手に舞う『勢獅子』と、八百屋の娘の恋愛をめぐるドタバタ劇の『松竹梅湯島掛軸』の三本立て

          歌舞伎の世界は"異世界モノ”と近いかもしれない

          頭に"エロ”を思い浮かべないと、右も左も分からない

          こんなことを書くのはとても恥ずかしいのだけど、僕は左右盲(さゆうもう)だ。あまり聞き慣れない単語かもしれないが、要するに右と左の区別をとっさに付けられないってこと。医学的には、左右失認とも言うらしい。 イメージしづらいという人に分かりやすく説明すれば、ある人から急に「右に曲がって!」と言われても、「えっと…どっちだっけ?」と頭の中が混乱して、ワタワタしてしまうって感じだ。めちゃくちゃ早い手旗信号を指示されている感覚といえば、共感できる人もいるかもしれない。 もちろん、ちょ

          頭に"エロ”を思い浮かべないと、右も左も分からない

          居場所のない私たちの安らげる場所とは:角田光代「東京ゲスト・ハウス」から考える

          地方在住の友人が、上京するときには「ゲスト・ハウス」を利用しているという。彼によれば、若い旅行者用の宿泊施設としては一般的なホテルよりもリーズナブル。その上、世界中から集まったさまざまな宿泊客たちと交流できるため、新たな出会いや文化的な刺激を求めて利用しているのだそうだ。 「ゲストハウス」というと、かつては公私がごちゃごちゃの混沌とした空間というイメージだったが、最近は内装などにこだわったオシャレな施設も多く、安全安心に泊まれる場所であることがアピールされ、後ろ暗い雰囲気は

          居場所のない私たちの安らげる場所とは:角田光代「東京ゲスト・ハウス」から考える

          生活のあらゆる場所は“庭園”になるかもしれない :いとうせいこう『ボタニカル・ライフー植物生活ー』から考える

          取材で「東京おもちゃショー」に参加したときの話。会場にはVR機器やスマホアプリと連動するロボットなど最先端技術が搭載されたおもちゃが並んでいて、それはそれで興味深かったのだが、どうにも大人向けな印象が強く、正直あまり心惹かれなかった。 ただ、その中でとても目を引いたものがある。植物育成キット「PETOMATO SERIES」だ。種や肥料などの入ったノズルと、水の入ったペットボトルを組み合わせると、毎日水やりナシで野菜や植物が育つという優れものである。夏休みの植物観察用に作ら

          生活のあらゆる場所は“庭園”になるかもしれない :いとうせいこう『ボタニカル・ライフー植物生活ー』から考える

          平成以降の光と影(比喩ではなく)について:谷崎潤一郎『陰翳礼讃』から考える

          平成になって変わったことのひとつに、"灯かり”があるだろう。街灯や家庭にLED照明が普及し、街は以前よりも確実に明るくなっている。蛍光灯よりも寿命が長く、従来品よりも電気代コストを安く抑えられる。普及が早かったのは当然だ。 出始めの頃は「青白い光に包まれた部屋が不気味」「光が全体的にのっぺりとしすぎ」といった感想も耳にしたが、現在は光の色や明るさを自在に調整できるタイプが発売されている。つまり、光と色を自由に操り、部屋の雰囲気を気分やシチュエーションに合わせて気軽に変えられ

          平成以降の光と影(比喩ではなく)について:谷崎潤一郎『陰翳礼讃』から考える

          不動産の”サンドイッチマン”が怖い:新庄耕『狭小邸宅』から考える

          2013年から2017年までの間に、自分の住んでいた世田谷区・上北沢の景色はガラリと変わった。 以前は、敷地の広い邸宅郡の密集した富裕層の住む町だったが、次第に家々が解体され始め、だだっ広い空き地が散見。しばらくすると、モデルハウスのようなデザインのこじまりとした家が建ち並んだ。いわゆる”建売住宅”が増えたのである。 それに伴い、住宅の玄関前で不動産の営業マンたちをよく見るようになった。大きな木枠の広告看板を両肩にぶら下げたまま、雨の日も風の日も屋外じっとしている。 彼

          不動産の”サンドイッチマン”が怖い:新庄耕『狭小邸宅』から考える

          町田康が頭を抱えた「永久リフォーム理論」とは?:町田康『リフォームの爆発』から考える

          2002年から2016年まで放映されていた『大改造!!劇的ビフォーアフター』を覚えているだろうか? 「匠」とよばれる建築士・大工が、問題を抱えた物件を改装していくという内容で、物件の見事な変貌ぶりを楽しめた。これをきっかけに「リフォーム」という言葉を覚えたという人も多いだろう。 住宅の新聞広告で「ビフォー」と「アフター」という言葉がよく使われるようになったり、悪徳リフォーム業者が社会問題として取り沙汰されるようになったりしたことからも、番組が社会に与えた影響の大きさは分かる

          町田康が頭を抱えた「永久リフォーム理論」とは?:町田康『リフォームの爆発』から考える

          生活の跡からつながるそれぞれの人生

          ※この文章は、株式会社 NJS日本住宅新聞社で発刊されている業界紙「日本住宅新聞」にて連載されていた書評『ゆりいかの文学住散歩』(2016年12月~2018年3月)の記事を元にしています。できる限り掲載当時の文章の雰囲気を崩さないように心がけながら、一部に加筆修正しています。あらかじめご了承ください。 第一回「生活の跡からつながるそれぞれの人生」長嶋有『三の次は五号室』(中央公論社) 賃貸契約の住宅に住む際、先の住人がどのような人であったかを知る機会は、あまりないだろう。

          生活の跡からつながるそれぞれの人生