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クリス・オウエンのツイート - なぜロシアの兵士はウクライナでの戦闘をやめて家に帰るのか? パート5
ウクライナで戦闘を続けることを拒否したロシア兵はどうなるのか?シリーズ第5回目では、@wartranslatedが翻訳した通話傍受や個人のアカウントを使って、辞めた兵士の話を見ていこうと思う。
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前編として、第一回目は、一般のロシア人兵士がウクライナで戦う動機となった要因について:リンク
後編では、第2回目は、志願兵に対する不十分な訓練や装備の不足、前線に到着する前に物資が略奪されるなど、士気を低下させるようなことがあったことを見てきた:リンク
第3回目は、ロシア人兵士が戦場で受けたトラウマが、兵士を辞めさせるきっかけになったという話:リンク
第4回目では、指揮官の戦術や行動に対するロシア軍の深い不満を検証し、そのために多くの兵士が犠牲になったことを明らかにする:リンク
これらのスレッドの中で、第752親衛自動車ライフル連隊の兵士、ヴィクトル・シャイガの体験談を見てきた。2022年4月から5月にかけて、自分の部隊がハリキウの東にあるウクライナのドフェンケ村を攻撃して大きな損害を受けた後、彼は戦い続けることを拒否した。
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彼だけではなかった。シャイガの部隊では、スペツナズ(特殊部隊)、空挺部隊、ワグナー傭兵と同様、「ほとんど全員が」ドフェンケ攻撃継続の命令を拒否したと言う。その命令を自殺行為と見なしたのだ。
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ウクライナで公開された通話傍受により、多くのロシア兵が戦場での悲惨な体験のために辞めていくことがわかった。ある者は、「誰も帰ってこない。みんな辞めていく。みんな消えていく。何でテレビでは何もやらないのか、わからない、ここは本当の大虐殺だ。」
別の者はこう言った。「拒否する奴らは山のようにいる!」大隊の戦術集団(600~800人の兵士と将校)のうち、「約150人が拒否したんだ。そこから戻ってきた奴らは、誰も裁く権利さえ持っていない。誰がこの地獄に2回目も行きたいと思うんだよ?」
様々な人員に及んでいる拒否者”500人余り“は、ロシア側に(「200人」は死亡、「300人」は負傷)と呼び変えられた。将校や歩兵、経験者や未経験者、特殊部隊や傭兵まで、様々な者が辞めている。ロシア軍も様々な対応をしている。
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シャイガは「イジュームの752連隊のザンポリット(政治将校)が、突撃に参加しない者の足元でアサルトライフルを撃っていた。その時、30人ぐらいが拒否者だった。彼は武器を持っている者から先制して武器を取り上げた。」と語っている。
しかし、これでは、士気の落ちた兵士達のやる気をそぐばかりだ。「撃たせてやれ!と叫ぶ者もいた。- ここで死んだ方がましだ。少なくとも、完全な死体が親族に渡るから、ちゃんと埋葬してくれるだろう」と叫ぶ者もいた。
兵士達は、「爆弾でバラバラにされて塹壕で腐るより、(もっと悪いことに)この卑劣なウクライナ人の捕虜になるより、自分の将校に殺された方がましだ 」と考えていた。
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ザンポリット(政治将校)から拒否者へのアピールは、明らかに人気がない。別の兵士は電話の中で、「昨日、このオカマ野郎どもが来たんだ。クソ旅団のザンポリットどもが、大群でやって来た。奴らは一緒にやって来て、「お前は歩兵隊に戻れ」と言いやがった。」と言っていた。
「くたばれ!」とそいつらに言ってやったよ。フレソフは逆上して旅団のザンポリット(政治将校)の顔を殴りそうになった。彼は逃げ出した... 「あのオカマ野郎がもう一度戻って来たら、俺はあのバカどもを、ここの格納庫で撃ち殺してやる」
ヴァレリー・ソロチュク将軍は、2022年5月に部隊に戦場に戻るよう命じようとした時、更に厳しい対応を受けた。「彼は銃を振り回し、撃ち始め、こう言った - “(戦場に)行かなければ殺すぞ!”と。そしてこの小僧は - ”さあ、殺せ!“と言ったんだ。」
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「くそー、彼は手榴弾とピンを抜いて、"さあ、撃て、さあ! ここで一緒に吹っ飛ぼうぜ "と。お終いだ。スペツナズさえも銃を向けて来たし、こっちも銃を向けた。要するに、お互いに撃ち合いそうになったんだ。クソッ!(ソロプチュークは車に乗って出て行った。)」
5月初旬、連邦保安局(FSB)の職員がイジュームにやって来て、シャイガに別のアプローチを試みた。「奴らは俺達を前線に戻そうと、やけに丁重な態度で来た。俺は、俺達は基本的に無意味な虐殺の中に投げ込まれていると言ったんだ。中尉は、全部わかってると言った。
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「俺は、ドフェンケの襲撃を拒否したのは我々だけではない、スペツナズ(特殊部隊)もこの村の襲撃を拒否している、と言った。奴は“(中将達も)知っているし、それに取り組んでいる」と答えた。奴は”我々は(拒否した)君達のことを誰も裁かない“と言った。」
FSBは兵士をプロパガンダビデオに利用することを考えた。「契約を解除してロシアに送る以外にも、奴らは俺達の何人かを使って、TikTokビデオを撮影し、戦争中の志願兵になることがいかに素晴らしいかを見せて、新しい志願兵を集めようとしたんだ。」
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しかし、FSBの別の大佐は、もっと強硬な態度をとった。「夜中に5人ずつ撃ち殺せば、他の連中は攻撃に応じるだろう」と提案したのだ。シャイガとその仲間にとっては幸いなことに、この提案は実行されなかった。
結局、シャイガはロシアに連れ戻され - 公然と屈辱を与えることで他の隊員を抑止しようとしたのだろう -「部隊の目の前で契約が打ち切られた」のである。指揮官が部下をやる気にさせるために公然の恥をかかせた例は、これだけではない。
ロシア南部のブディノフスクでは、地元の司令官が「THEY REFUSED TO CARRY OUT COMBAT MISSIONS (彼らは戦闘任務の遂行を拒否した)」と言う説明文の下に、300人の拒否者をリストアップした「不名誉ボード」を掲示した。(ロシアでの不名誉ボードの使用については、以下を参照)
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また、「裏切り、欺瞞、嘘をつく傾向がある、特殊作戦への参加拒否」という蔑称を軍歴に書かれスタンプを押された兵士もいた。辞めた後の就職に不利になるようにしたいのだろう。
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このスタンプが、退役を思いとどまらせたようだ。ある兵士は、母親に辞めない理由を話しながら、こう言った。「特別作戦への参加を拒否したとって言う赤いスタンプを押されると、恥になる。一生の恥だ。」
一部の指揮官は、より強圧的なアプローチをとっていると伝えられている。録音された通話によると、ロシアのベルゴロドにいた兵士達はウクライナに行くことを拒んだ。KAMAZに乗せられ、「これから空港まで乗せて、家に送ってやる 」と言われたそうだ。
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「そして、ロックされたKAMAZ(トラック)でウクライナに向かった。(兵士達は)途中でそれに気付き、車から飛び降り始めた。... 奴ら(指揮官達)は何かがおかしいと察し、車から飛び降りて空中で銃を撃ち始めた。」
「何人かは何とか親戚に電話をして... みんな連れて来られた方向に走り出した。15キロ走って、走っている間に誰かが何とか親族に電話して、検察庁に電話して控訴状を書くように言った。」
この拒否者(ロシアのある民族共和国のブリヤート族と思われる)は、その後「戦争捕虜のように」拘束された。ガレージに閉じ込められ、1日1回、お粥を食べさせられた。」
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兵士の妻達は、契約を打ち切ったにもかかわらず夫が帰還していないと訴えるビデオを録画した。150人が帰りのバスに乗せられたが、FSBが妻達と「対話」している間にウクライナに送り返された。
ルハンスク市には数十人の兵士が収監され、ワグナーグループの傭兵が警護していた。「奴らは、軍事基地の外に地雷が設置されていて、逃げようとする者は敵とみなしてその場で射殺すると言った。」
兵士が契約を解除するには、官僚的な手続きを踏まなければならない。辞表を出せば自動的に打ち切られるわけではない。兵士は自分の決断について、指揮官に理由ある説明をしなければならないのだ。
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その後、司令官は、意見・勧告と兵士の証言を添えて、地元の軍管区本部に解雇通知書を送る。その後、軍管区司令部が最終決定を下す。
この手続きは、完了しなければならない期間が定められていないため、必ずしもスピーディーに行われるとは限らない。また、兵士は退職の「正当な理由」を述べなければならないが、何が「正当な理由」なのかの明確な定義はないため、結果は保証されていない。
辞職した兵士は、様々な方法で罰せられる - 退役軍人に支給される年金や恩給、就職や子供の教育に役立つ退役軍人証明書などを没収されるのだ。彼らは起訴されたり投獄されたりすることは想定されていない。
また、親身になってくれる医師を探し、その医師が医学的不適格の証明書を発行してくれるという方法もある。ある兵士は、「今は、兵士達は、どんな健康上の問題を抱えていて、"医療休暇中" でも(戦場に)行くことになるだろう」と言った。彼は「心電図をとって、さっさと帰る」ことを狙っていた。
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辞職勧告に協力的な指揮官も数人いた。ある兵士は母親に「僕は、司令官が手伝ってくれるから、辞める...。誰も(普通は)何にもサインせず、ただ去って行くだけなんだ。司令官は、僕は必要ないと言って、行かせてくれると思う。」と語った。
指揮官には辞めたいと言う希望が殺到していると言う。ある連隊長は「もう山ほどある、それだけは確かだ」と言われた。ほとんど全員が "拒否 "と書いている」と言った。
この部隊の兵士達は、退去要求の結果を聞くまで30日ほど待たなければならないが、その間、「反抗」「命令拒否」(と言う理由)によって戦闘から身を引いていた。
別の部隊は、(拒否兵達が)自分達だけで出発する計画を立てた。「10人がUralトラックですぐに出発し、何かクソみたいなことが起きたら、ベルゴロド(ロシア)の方に行くように準備した。奴らは缶カラにディーゼルを入れ、それをトランクに入れ、準備をした。」
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ある軍曹は「ウクライナ人から奪った車で逃げ出した。彼は国境を越え、アサルトライフル、鎧、武器を手放し、家にたどり着いた。そして奴らはこの軍曹に対する裁判を始めることさえできない...彼には前科も何もないから、何も掘り起こすことができないんだ。」
人手不足のためか、指揮官は退去要求をなかなか認めようとしない。ある司令官は、「我々がいなくなれば、他の誰かが入って来なければならないから、そうでなければ全てが(台無しに)なる。君の代わりは誰もいない」と言う。
「大隊は徐々に崩れ、(除隊したい者は)去る。(大隊長は、)我々には一方通行の道しかないと言い - 我々には弾の入った機関銃があるから、お前達が去ろうとしたら、俺は道へ出て(撃ち)始めると言った。」
また、立場を悪用して賄賂を受け取る司令官もいた。第126沿岸防衛旅団に所属する兵士の母親は、息子を安全な軍事基地へ移すよう将校に賄賂を贈ったが、約束した異動が実現しなかったことを知り、取り乱したそうだ。
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「どうしてそんなことが起こるの?たくさんお金を取られたのに。そんなはずはないわ。信じられない、信じられない、確かに異動になる、息子よ、そんなこと言わないでちょうだい、転勤になるわよ! ... いやだ!異動になるわよ!ありったけの金を取られたんだから!」
他の場所では、拒否者は強烈な心理的プレッシャーにさらされた。「ここに何人かが書いた報告書がある - (司令官は)武器を取り上げ、(兵士達は)4日間学校で座っている。ただ座っているだけだ!」
「(兵士達は)いかに自分達がオカマ野郎で裏切り者で糞食いよりタチが悪いか!と言われるんだ!お前達は男じゃない、女だ! そして兵士達はそれを聞き流しながら座っている。除隊することを望みながら!クソ食らえ!ロシアに着くまで 解雇される事はない!絶対にだ!」
ある兵士によると、「暴力の脅威にさらされた拒否者達は、ただ何処かわからないような所で降ろされ、それ以来行方不明になっている。」彼らの消息は不明である。
辞職した兵士の数は不明だが、今までに数千人はいるだろう。
ウクライナ戦争が続く限り、ロシア軍は戦意を喪失した兵士の流出に常に直面することになるであろう。ある人はこう言った。「俺はこの国と同じく、この軍隊のことを口汚く罵ってきた。こんなクソみたいな軍隊にはもういられない!」
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次回は最終回で、もっと短くすることを約束します😄。このスレッドで提起された問題について、皆さんから寄せられた質問に答え、またロシア軍の見通しについて個人的な意見も述べてみたいと思います。/終