クリス・オウエンのツイート - なぜロシアの兵士はウクライナでの戦闘をやめて家に帰るのか? パート6(ボーナス版)
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ウクライナで受けた甚大な犠牲に対して、ロシア軍はどう対応しているのか?ボーナス版として、@wartranslatedのロシア兵の電話を翻訳したアーカイブをもう一度引用するが、これはウクライナ人によって傍受され公開されている。
このシリーズの第一回目では、一般のロシア人兵士がウクライナで戦う動機となった要因について、ロシア人兵士の証言や電話でのやり取りを検証した。リンク
第二回目では、前線の志願兵に対する不十分な訓練と装備の不足、そして腐敗で有名なロシアの兵站部隊による物資の略奪がもたらした影響について見てみた。リンク
第三回目のテーマは、ロシア人兵士が戦場でのトラウマから戦闘続行を拒否するようになったというものだ。リンク
第四回目は、指揮官の戦術や行動に対するロシア軍の深い不満が、多くの兵士の命を奪っていることを検証したものだ。リンク
そして、第五回目のスレッドでは、ロシア兵が契約を破棄し、戦争から抜け出し、軍を去ることを決意したときに何が起こったかを調べた。リンク
ウクライナ戦争は余程の致命的なものだ。米国は、少なくとも75,000人のロシア人が死傷したと推定している。ウクライナ側は、8月5日までに41,650人のロシア人が死亡したと主張しているが、通常の死傷者の比率を1:3と仮定すると、更に12万人の負傷者が出たことになる。
CSISによると、ロシアの初期侵攻軍は約19万人だったが、これにはドンバス民兵と占領任務のロシア国内治安部隊(ロスグバルディヤ)が含まれていた。地上戦闘部隊は14万人程度に過ぎなかった。
したがって、これまでのところ、ロシアの死傷者の数は、初期地上戦力全体の少なくとも半分に相当する。当然のことながら、このことは、私がこのスレッドで調査したように、士気や部隊の結束力、戦闘効果に壊滅的な影響を及ぼしている。
このことは、公開されたロシアの電話傍受の多くに見られる絶望的な口調に反映されている。
(これらは必ずしも軍全体を代表しているわけではなく、最もひどい被害を受けたいくつかの部隊の経験を反映していると思われることに注意。)
多くの電話は、兵士が自分の部隊の壊滅的な損失について説明している。ある兵士は、自分の中隊(通常100人程度)が壊滅状態であることを語っている。「完全にやられた。うちの中隊は...10人しか残っていない。」
「107人いたのが、10人残った。その中から4人が去り、6人が残った。第1小隊からは俺一人が残った。第1小隊には22人いたが、残ったのは俺だけだ。」
ある兵士が語った戦闘(おそらく5月のシヴェルスキー・ドネツ川横断の惨事)は、「一晩で50台の戦車が燃やされた」という結果になった。「想像してみてくれ、50台の戦車が燃やされたんだ。」彼は300人中、たった15人の生存者の一人であった。
別の兵士は、大隊戦術グループ(BTG)であろうものの運命を説明し、友人にこう言った。「ここに来たときは670人いた。今は150〜147人...おそらく今頃は130人になっているだろう 」と。
ある部隊は、「今、多くの者が死んでしまったので、将校はいない。将校達、15人の将校がここにいた、まさに俺達の(部隊の)将校が。その15人が死んじまったんだ。基本的人手不足で、この不足のために、将校も運転手も誰もいないんだ。」
装備の損失も深刻だった。ある兵士が母親に言った。「戦車は90台くらいあるはずなのに、何台あると思う?連隊の戦車を全部合わせても14両くらいしか残っていないんだ。連隊に14両しか残ってないんだよ。」
他の2つの部隊の兵士は、自分達の車両は「粉々になってるか...砲塔が機能していないか、他の何かが機能していないか...車輪が壊れているか、他の何か」だと言った。
「12門のうち砲は2門しか残っていない!全て粉々だ! 車両も12台中、動けるのは3台だけだ!」と言っている(何より、破損した装備の回収・修理に大きな問題があることを示唆している)。
1つの部隊で多くの死傷者が出たため、3つの大隊を1つに統合しなければならなかったが、それでも生き残った者が戦う気になれるかどうかは不明であった。「大隊が組めるかどうかなんてクソ食らえだ。」
「そうでないなら、誰が戦うんだ?おそらく撤退することになるだろう。もう誰も入りたがらないから、10日間くらい心理学医が話をすることになるだろう。2,000人が入ってきたのに、500人残れば上出来だと言っているんだよ。」
ロシア軍の指揮官が、自分達の残存兵力について積極的に上官に誤解を与えていたことを示唆する電話もあった。おそらく、人数に関する誤った情報の結果、わずかな生き残りの兵力で堅固な守備を固めるような命令が出されたのだろう。
ある兵士が妻に愚痴をこぼした。「軍の司令官が上層部に戯言を言っているよ。ここは何もかもすっげえ素晴らしいだの、全てうまくいっているだの、人数が多いだのとね。」
「例えば、奴らはデータを転送する...26人が攻撃に行く場合、奴らは126人が攻撃に行くとデータを転送する。」ロシアは代わりに「20人、15人といった小さなグループ」で攻撃し、大きなグループを使うことを避けた。
深刻な人員不足の部隊に所属するある兵士はこう言った。「本部の壁には、我々の旅団の人員配置のデータが掲げられている - 87%いる事になってるんだ。このオカマ野郎達が何をしてるか信じられるか?俺達は10%もいないんだぞ。このクソッタレ!」
通常、消耗した部隊はローテーションで補充されるか、個別の増援で回復するものだが、そのどちらも行われなかったようなケースもある。ある兵士は、自分の部隊で「中隊長が死んだ、将校もみんな死んだ」と訴えた。
部隊は「1カ月も援軍を待っていた」し、残った兵士の多くはもう戦う気がなかった。「みんなうんざりしていた。半分は単に道徳的にあきらめた。」
前線の歩兵が絶望的に不足していたため、歩兵の役割に専門家が配属されるようになったのだ。第752親衛自動車ライフル連隊の兵士で、その後LiveJournalに自分の体験を書いたヴィクトール・シャイガはこう言う。
「我々は全員歩兵になった。2人は偵察になるはずだったにもかかわらず。そのうち1人は軍曹で、各種センサーやカメラの観測方法の専門家だった。」
しかし、これは特別な例ではなかった。ある兵士は、自分達が最前線の歩兵として使われることを知った工兵(エンジニア)達のグループが反乱を起こし、軍を去ることを要求したと、傍受した電話の中で語っているのである。
「ここに来た工兵は6人で、すぐに歩兵に加えられた。そして今日、彼らはこのことを話しに行った。彼らは拒否している。契約を破ってでも出て行く気でいる。」
たとえ、援軍が来ても効果がないかもしれない。ある兵士は、傍受された電話で仲間に言っている。「今、分隊長として来ても、一緒に行動する者はいない。工兵もクソもない...クルーはいない...全く...司令官もいないんだ。」
別のケースでは、非常に動揺した兵士が母親に言った。「誰もいないんだよ、前進する者がいないんだ、わかる?村を奪うのに8人⁉︎ 8人だよ、母さん! 相手はコンクリートで固められた500人のウクライナ人だ。それで、こっちは何の支援もない8人なんだよ!」
ローテーションが行われると兵士に約束されていたにもかかわらず、ローテーションは行われなかった。シャイガによると、2月24日にウクライナに送られた兵士は、5月になってもまだウクライナにいたそうだ。彼の部隊は9月までそこにいることになると、通話を傍受したところ、このようなことが何度もあったことが記録されている。
ある兵士は、自分の司令官が、ひどく疲弊した旅団をローテーションさせようとしたが、上官から執拗に断られたと語った。「何度も手紙を出したが、いつも旅団の撤退を却下される。」
「将校規定には - 旅団の残りが50%を切ったら、旅団を撤退させるか、他の旅団に所属させる - と書いてある。でも、実際はどうなんだ?俺達は以前と同じ旅団で戦ってるが、どんどん人が減って行ってる。」
ウクライナにはまだ約120の大隊戦術集団が存在すると推定されている。しかし、これらの証言が示すように、ウクライナが彼らを消耗させ続けているため、彼らの多くは現在著しく力不足であり、戦うための戦力が整っていない可能性がある。
次回は、遅ればせながら、このシリーズの最終スレッドとして、これらのスレッドで提起された問題について、皆様から寄せられた質問にお答えするとともに、ロシア軍の見通しについて、私見を述べたいと思う。/終
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