恵美須町駅
私がそこに着いたのは午後7時50分頃。
ちょうど41分の電車を乗り逃したので、ゆっくり待つことになった。
新世界の脇にある小さなしかし小綺麗な駅はそこにあった。まだ建てられてから数年も経っていないらしい。駅の真横では高層マンションの建設が続けられており、とても静かだ。
とても都会の真ん中の駅とは思えない佇まいである。
次の電車は8時14分。まだたっぷり時間があるので小説を開く。一節を読み終わり本を閉じると、人がまばらに集まり始めていた。
ホーム脇にあるベンチに腰をかけると目の前の青い建物でザルと思しきものを振っている様子が見えた。おそらく中華料理…ラーメン屋なのだろう。
そんなことを考えていると放送が鳴った。この雰囲気には馴染まないお風呂が湧いた際の音楽のようなものだった。
どうやら電車は発車10分前くらいに到着するらしい。
ゆっくりとホームへ入ってきた電車には10人程度が乗っており、降りるやいなやビルの陰へ消えていった。
乗務員が電車から降り、歩みを進める。どこへ行くのかと思い目をやるとどうやらホームの一番先に詰所のようなものがあるらしい。
長いロングシートに腰をかける。乗客はまばらだ。
数分経って電車は発車した。
真っ黒に染められた景色の中から遠ざかる白い光が見えた。
終