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家庭裁判所の調査官という人たち(2)

 私の裁判離婚では子どもの調査がひっきりなしに行われた。調査官という人が調査をし、裁判官は調査報告書などを見て審判を下していた。だから裁判官にはほとんど会わなかった。代わりに何人もの調査官に会った。
 初めに調査官は子どもに言った。「あなたたちに良いことを考えるために来ました」
子どもたちは自分に寄り添ってくれる人が現れたと思ったに違いない。自分の身の上を一生懸命に話した。しかし調査報告書を見て彼らはがっかりした。そこに書いてあったのはほかの判例とも照らし合わせた
平均値であり、到底彼らの意に沿うものではなかったからだ。調査官が言っていたのはあくまでも裁判所から見た「あなたたちに良いこと」であり、子どもたちに共感することではなかった。
 子供たちはしだいに調査に協力しなくなった。
 ある日調査官が家庭訪問に来た。いつも男女2人で来る。息子たちは逃げて不在。家に残った小学生の末娘に女性の方が矢継ぎ早に質問をした。娘は嫌がって私の後ろに隠れた。私はいった。「こういうことが原因で子供が心を病んだら裁判所は責任を取ってくれるのですか?」
 「とりません」女性が即答した。私は黙ってその女性の目をじっと見つめた。男性の方がおろおろしながら言った。「そういうことが起こらないよう私たちも最大限の注意を払ってまいりますので」
 相手の気持ちも考えずに、自分の欲しい情報だけ得ようとすることは世間では非常識という。調査官は常識感覚をなくしてしまうのか?
 裁判所は「ハラスメント」という言葉に鈍感だ。

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