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電車で運んだありえないものシリーズをやったら面白そう

ひとつの空間に集まった人たちは、ただ当たり前の日常として、何の目的もなく、お互い踏み入れることなく混じり合うことなく、身を寄せ合っている。そんな体験は電車やバスなどの公共交通機関以外でしたことがない。電車で出会うひとはみんな普通の人で、でもよく目を凝らすと一人一人が愛おしい。私は一緒に居合わせた、その人たちと手を取り合って踊りたい。電車で出会った人たちと私の試行エッセイ。

知らなかったけど世間はもうゴールデンウィークに入っている人もいるらしい。だからかな、家族連れが多い。お母さん、男の子2人の家族が隣にいる。子ども2人をお母さんは座らせて、お母さんは立っている。そしたら、上の子らしき子が、お母さんに「お席譲りましょうか?」と演劇調で聞き出した。お母さんは「いいわよ、座ってて」という。すると弟が「そしたら、僕の席に座りなさいよ」と冗談っぽく言い出した。「そしたら僕が」「いや私が」「どうぞどうぞ」というあのダチョウ倶楽部の席譲り劇を家族で展開しはじめた。男の子2人はイタズラっぽい顔できゃっきゃっと笑っている。この子たちはダチョウ倶楽部のネタを知らない年代そうなのにこういう展開で笑えるなんてすごいネタだな。男の子たちの笑い声とともに電車を降りる。

京浜東北線 2023年4月30日 大宮行


本が好きな友人と本をめぐる旅をする。岐阜に行く途中の電車で各々本を読む。私も普段東海道線に乗るけれど、名古屋と岐阜をつなぐ東海道線もあるのかとしみじみ。2人がけの席が向かい合わせの4人ボックスタイプの車両だった。友達も私も、向かい側の人(知らない人)も全員本を読んでいる。別にそこに会話はない。読んでいる本のタイプも別々。でもなんかいい。ボーダーの服を着た向かい側の女性は窓にもたれながら、東野圭吾さんの『予知夢』を読んでいる。友人は杉山由香さんの『おうちさよなら日記』を。私はハン・ガンさんの『すべての、白いものたちを』をみんなそれぞれの世界。でもなんだか、ひとつの空間を本を通してつながれた気がする。車窓をぼーっと見る時間や本を各々が読む時間が好きだ。言葉を交わさなくても、考えが交わることがなくても、なにかを同じ空間にいる人たちが共有していることに安心を覚える。スマホは無限の選択肢があるから共有している感覚になりにくいのかもしれない。ま、本なんて読まなくてもいいのだけれど。なんとなく、本を介した仲間意識があると思う。

東海道線 2023年5月6日 大垣行


電車で台車を運んでいた。知人の引越し前フリマで大きいものを購入したため、フリマで売られていたIKEAの台車に購入したものを括ってくれて運びやすいようにしてくれた。電車に乗っていたら、脚立を持った人が現れた。ちょうど前の席に座る。この電車空間には、台車と脚立がある。何か出来そうだ。脚立は新品だった。今日購入したのかもしれない。郵送にしなかったのは、急務で必要だからかな。都会の電車は車を持っていない層がいろんなものを運んでいく。そういえば昔、掃除機を運んでいる人がいたなと思い出す。電車で運んだありえないものシリーズをやったら面白そうだ。

京浜東北線 2023年5月6日 磯子行

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