【短編】悪夢

※あくまでフィクションで現実の話ではありません。
少しの間、書くのを躊躇していましたが、一つの作品として捉えていただけたら幸いです。

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ピストルを握った手が汗ばんでいた。
いや、これは汗ではない。
さらっとした感触が掌に広がる。
血だ…
どこからか血が出ているのか。
いや、体のどこにも痛みを感じない。
私の血ではないのか…?
じゃあ誰の…?

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目の前に、子どもが倒れている。
7〜8人、いや、もっとだ。
10人をゆうに超えている。
折り重なるように倒れ、白いワイシャツを真っ赤に染めている。

誰がこんなひどいことを…
頭上には寒々しく真っ青な空が広がっている。
背中にじっとりと汗をかいているようだ。
地面に膝をついているのか、両の膝が痺れてくるのを感じた。

頭が割れそうに痛い。
ひどい耳鳴りもする。
急に激しい吐き気に襲われ、目の前の景色がじわじわと白んで色を失った。

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真冬だというのに、半袖の白いワイシャツに男の子は濃紺のハーフパンツ、女の子は濃紺のプリーツスカート姿の子どもたちが見える。
小学校5〜6年生くらいか、肌の色からすると日本人ではないようだ。

子どもたちはみな無邪気な笑顔で、きゃっきゃっと声をあげながら、私を追いかけてきた。
鬼ごっこか何かのつもりなのか。
反射的に体が動いて、彼らから逃げようと走り出した。

すると子どもたちの手が急にぎゅんと伸びてきて、私を捕まえようとする。
手と手が交差し、絡まりながら、ものすごい勢いで私を追いかけてくる。

私はその手から逃れようと近くの建物の中に逃げ込んだ。
うちっぱなしのコンクリートの床の向こうに、教室のような部屋が見えた。
慌てて駆け込んで窓ガラスの扉を閉めると、さっと鍵をかけ、そのまましゃがみ込んだ。

がくがくと震える膝を手でつかみ、体を曲げて、必死で荒い息を抑えている。
ウールの厚いセーターの中も帽子の中も汗だくで、いく筋もの汗が首をつたっている。
目の前がだんだん白んでいく…

いや、ここで倒れたら、やられてしまう。
やっとの思いで、体を起こすと、大きなガラス窓の向こうに、子どもたちが立っていた。
笑っているか、怒っているのか、その表情までは分からない。

ふと、自分の左手がピストルを握っていることに気がついた。
ピストルを持った左手を構え、窓ガラス越しに、子どもたちめがけて、1発、2発。

どうやらサイレントのようで、小さくピューンとだけ空気を震わせると、子どもが1人、2人、バサッと大きな音を立てて倒れた。

間髪おかずに、引き金を引く。
1発、2発、3発、4発…
弾はレーザーポインターの狙い通りに命中し、子どもたちがバサバサと音を立てて倒れていく。

時間の流れ方がおかしい。
全てがスローモーションのようだ。

向こうもいつの間にかピストルを手にしていた。
私をめがけて容赦なく発砲してくる。
私はさっと床を転がり、弾の雨を避けると、また発砲した。

1発、2発、3発…
ピューン、ピューン、ピューンと空気が震えて、手にその振動が伝わる。

不思議なことに、私の放った弾は全て命中するのに、彼らの弾は私にかすりもしなかった。
窓ガラスはとっくに粉々に破れていて、返り血が遠く離れた私のところにも届いていた。

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布団が汗でじっとりと湿っている。
横向きの枕の上で、頭の右側がその重さで痺れている。
少しは眠ったはずなのに、ぐったりと疲れている。

3時半少し前。
体はまだ朝を迎えられる状態ではないようだ。
もうひと眠りしないと、明日は、もとい、今日は、ずっと結論を先延ばしにしている彼女に会う日だ。
ゆっくりと眠りに落ちながら、再び思考の整理が始まった。

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蘭
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