【短編小説】甘くて酸っぱい青春の味
「黒川君!あの…これ。差し入れ!」
そう言って差し出された手には、200mlのいちごオレが握られていた。
「よかったら部活終わりに飲んで。」
伸ばしかけた僕の手に、押し付けるようにいちごオレを渡すと、彼女は校舎の方へと走って行ってしまった。
彼女の後ろ姿に向かって僕は「あ、ありがとう!」と声をかけながらいちごオレを掲げる。
その声にビクッと肩を引き上げてこちらを振り返った彼女の顔は、いちごの様に真っ赤だった。
「お前、部活中によくそんな甘いもの飲めるよな。」
同じ陸上部の崎田が『信じられない』といいたげな顔でこちらを見ている。
「嫌いなの?いちごオレ」
「いや、そうじゃなくてさ。部活で疲れた時に、よくもそんな甘ったるいのが飲めるよなって話。」
「崎田、お前わかってないな〜。疲れてるからこそ、飲みたいんだよ。この甘さが、癒しをくれるわけよ。」
パックが少し歪んだいちごオレを飲みながら答える。
「それに、このいちごオレは一味違っててさ。甘さの中に、イチゴらしい酸味がアクセントになってて、癖になるんだよね。」
「そのパッケージのいちごオレ、飲んでるやつあんまり見ないよな。」
「そうなんだよ。こんなに美味しいのに、裏門の自販機にしか売ってなくてさ。わざわざ買いに行くのが大変なんだぞ?」
「へーそうなんだ。」
崎田は興味がなさそうにタオルで顔を拭きながら相槌を打つ。
「あ!でも1人いたわ。それ飲んでたやつ。」
何か思い出した様子の崎田が、ニヤニヤしながらこっちを見てくる。
「この間さ、白田さんがそれ飲んでたんだよ。」
「え?」
「白田さんがいちごオレ持ってるの姿、可愛いなーて思って眺めてたわけ。そしたら白田さん、それ飲んだ後にすごい勢いで咽せててさー。かわいかったな〜。多分まずかったんだろうな。」
「たまたま咽せただけだろ!それに、俺は白田さんのもっと可愛いところ知ってるもんね!」
「なんだよそれ!教えろよ!!」
「いやだね〜。絶対教えない!さて、そろそろ練習戻るぞ!」
「ずるいぞ!」
「もう行かないとコーチに怒られるぞ。それに今日はなんだか、いいタイムが出そうな予感がするんだ。」
今回は、お題の3単語で作るショートショートにチャレンジしてみました。
今回のお題は…
決められたワードを使って書くのは初めての挑戦でしたが、思いの外楽しく書けました。
お題を変えて、頭の中で文章を作って、またお題を変えて……と、永遠に楽しめてしまうので、忘れる前に文字に起こしてしまわないときりがなさそうです。笑
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