心お弁当【毎週ショートショートnote】
空のお弁当箱から折り鶴をつまみ上げる。メモ用紙で作られた折り鶴の羽にごめんの文字が見えた。この作者である同棲中の恋人、晃太はかなり意地っ張りな性格だ。
包装紙で出来たクマの隣に折り鶴を並べる。ずらりと並んだ動物達には、ごめん、すまなかった、今後は気をつける、何か欲しいものあるか等とメッセージが隠れていた。
喧嘩するたびに、お弁当箱の中に忍ばせてくるのだ。どんな時でも残さず食べてくれるのは嬉しい。それが晃太の大嫌いな青椒肉絲ならなおさらだ。涙目になりながらピーマンを食べる姿を想像すると怒りの気持ちも無くなった。
「あのさ、渡したいものあるんだ」
風呂上がりでタオルを腰に巻いた晃太が私の手にハート型のお弁当箱を載せた。
「開けてみて」
言われるがまま開けると中にハート型の折り紙に指輪がはまっていた。
「名付けて心(ハート)お弁当。なんちゃって」
笑った拍子にタオルがばさりと床に落ちた。
了