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焼きそばを待ってる(ショートショートnote)

 屋台から漂ってくるソースの匂いにたまらず、彼は私を桜の下に置いて行ってしまった。花見を楽しむ為に、先にご飯を食べたんじゃなかったのかと少し苛立ってしまう。温くなったペットボトルのお茶を飲む気になれず、並んだ屋台のどこかにいる彼を探した。桜並木の間から、ねだる子供を引きずるように歩く母親や、たこ焼き屋の前でいちゃつくカップルのそばでうろつく彼が見えた。優柔不断の彼にちくりと匂わせた未来は、彼にとっては重荷だっただろうか。
 さらさらと散る花びらの下、迷いに迷って買ったであろう焼きそばを抱えて彼がゆっくりと戻ってくる。
「ごめん、迷っちゃって。唐揚げも買っちゃった」
 どすんと座った彼は、すぐに焼きそばのパックを開けた。かつ節のいい匂いもする。
「来年はどこの桜を見たい?」
「え?」
「探しておく」
 早口で言った彼の気持ちがほんの少し見えた気がした。


ショートショートnoteからキーワードを二つ選んで作りました。

☆焼きそば+を待ってる

#ショートショートnote



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