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しゃべるピアノ

「ドレミファミレド」
 四歳の娘が弾くかえるのうたは楽しそうな音がする。電子ピアノに搭載されている「褒め」ボタンのおかげだろう。上手に弾けなくても、良いところを褒めてくれる。
『リズムは素晴らしい! 自分の指をよく見て弾いてみよう』のように。
 娘は失敗しても途中で投げ出さないようになった。
 他にも「励まし」や「ミスの指摘」など、オプションで入れることが可能だ。
 これは親にも有難い機能だった。難易度が上がっていくにつれ、ピアノ経験者でなければ、下手に口を出せなくなる。幼少の頃からの信頼感で、ピアノの声に耳を傾けるようになるという。
 ある日、ピアノメーカーから不具合が出た為に一度メンテナンスしたいと申し出があった。生徒の一人がネットからダウンロードした「恋人」というオプションを入れて、飲まず喰わずでピアノから離れなくなったらしい。ふと、娘を見るとピアノに頬ずりをしていた。

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