数学ギョウザ
娘のパジャマがサイズアウトしたので買い替えたいと夫に話すと、自分も買いたいものがあるから会社の帰りに買ってくると言う。私は娘が好みのパジャマの画像とサイズを夫にメールで送る。任せろと笑う夫に一抹の不安を感じた。
「パパ!」
ソファーでうとうとしていた娘が夫に駆け寄る。
「これを待ってたんだろ」
受け取った紙袋を覗き込んで困惑の表情を浮かべた。
「このおじさんたち、だれ?」
「数学者ーー偉い人だよ。こっちはギョウザ」
「可愛いキャラクターと、リボンとか、ポップな柄って言ったわよね?」
「キャラクターとポップだろ。ほら、着てみろよ。物は良いぞ」
娘はしばらく嫌そうだったが、着心地は良かったようで交互に着るようになった。どこかで、入れ違えて数学者とギョウザのセットを着ている事もしばしばある。
「気に入ってくれたんだ」
「ううん。パパが好きなだけだよ」
それを聞いて夫は少し反省したようだ。