みんなで動かない
破壊されたビルの影から路肩に停めてある社用車に三人は乗り込もうとしていた。
「どうする? 今なら行けるか?」
「どうかしら。あいつは?」
ドーンと近くでまた破壊音が聞こえた。
「近いな。ここも危ないかもしれない。行くなら今しかない」
三人は顔を見合わせ頷いた。
「……一、ニ、三でいくぞ」
「いや、カウントダウン方式がいい」
「どうでもいいでしょそこは!」
男二人が揉め始めるのを女がヒステリックに叫んだ。
「しー!」
男二人が同時に指に手を当てた。
「だめ、動かないで!」
ドーーン! バキバキバキ。
「ひっ」
女が悲鳴をあげる瞬間に男達が女を抱え、社用車まで走った。ブンと巨大なアームが空を切った。
「ニャアアアアアアアア!」
「早く車を出せ!」
「エンジンがかからないんだよ!」
「きゃああああ」
「煩い! 黙れ!」
のっしのっしと巨大な猫型宇宙人が動かない車へ向かってくる。
了
⭐︎この作品は毎週ショートショートnoteに参加しています。
夢にみた一部をそのまま書いてみました。
猫、怖かったです。