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株式会社リストラ

「主人公の友人役だと聞いてたんですけど」
「全体のバランスを見て、女性に変更したんだ。君には次回作に出てもらうから」
 男は白い扉を開け、中に入るように促した。会議室の様な部屋にいた人達がこちらを見た。
「何です、この部屋は」
「役者の待機室なんだけど、本人たちは『株式会社リストラ』なんて言ってるようだ」
 男は肩をすくめた。
「あの」
「悪いが、そろそろ現場に戻らないと」
 男は部屋を出て行った。
「無駄よ。そのドアは滅多に開かないのよ」
 女性は僕とそっくりのぼやけた色の服を着ていた。
「開かないってどう言う事? 家に帰りたいんだけど」
「あなた、家どころか家族だっていないでしょ」
 記憶を辿るが何も思い出せない。
「あなただけじゃ無いわ。ここのキャラクターにはバックグラウンドはおろか人相も怪しいものだわ」
 ざわざわと顔のない人がこちらを見た。
「小説の主人公になるなんて夢のまた夢よ」

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