コロコロ変わる名探偵
美声に聞き惚れている所に邪魔が入った。
「七曜(しちよう)さん、何で木曜日のバーにいるんです! 今日は水曜日のバーにいてくれなきゃ」
「向島くん、静かにしたまえ。折角の、イテテテ」
「七曜さんが言ったんですからね! いつも同じバーじゃ、頭が冴えないって」
「今日はジャズの気分だったんだよー」
「明日は、事件の関係者達に話を聞きに行って、大好きなジャズバーで情報整理でもして下さいね!」
七曜をボロアパートに押し込んで、向島はのしのしと帰って行った。発泡酒を飲み干すと、自分の臭いゲップに涙が出た。
約束通り、木曜日のバーに探偵はいた。
「あら、折り紙? 双頭の鷲かしら?」
ジャズシンガーが折り紙を手に乗せて眺めている。
「お姉さんと出頭してくれませんか?」
「昨日来たのは、私たちが双子なのかどうかの確認だったのね」
「いい弁護士なら相談に乗りますよ」
金曜日のバーの名刺を鷲の嘴に差し込んだ。