アメリカの教育事情②~アメリカの学校、親はどう関わっている?
以下クラブハウスで紹介した内容。モデレーターは前回に続き、LA在住のMakiさん、日本でPTA活動に従事する福田さん。
アメリカのPTAとボランティア活動
学校での親の活動といえば、日本では「PTA活動」のイメージだが、調べてみると、アメリカには「PTA」とその他のボランティア活動という大きく分けて2種類の関わり方があることがわかった。
・PTA(Parent Teacher Association:全米PTA団体)
PTAは1897年にアリス・マクレラン・バーニーとフィービ・アパーソン・ハーストにより、National Congress of Mothersとして設立された組織でいわゆる日本のPTA同様に役職がある組織。役職として会長、副会長、書記、会計など日本と基本的に同じだが、その他先生への感謝イベント担当、Fundraising(寄付)担当、Spirit wear (スクールグッズ)担当など、日本にはない役割もある。
このほか、学校、地域により全米PTA団体とは別にPTO(Parent Teacher Organization)というより自由な組織を持っているところもある(筆者の子供が通っていた学校にあったのはPTA)。
・保護者によるボランティア活動
PTAは学校に所属し、役職のある組織であるのに対し、学校単位、クラス単位などでの気軽なボランティア活動がある。ボランティア活動は基本的に自主的にやるものなので、一部の役割を除いては、該当者を皆で募ったりすることはない。
学校ボランティアいろいろ
以下が筆者が子供の学校で実際に経験したり、目にしたボランティア活動
・クラスマザー(クラスの取りまとめ。任意の会費徴収、パーティ、先生へのギフトの企画・用意など)
筆者は3回経験あり。日本の学校でいう「学年委員」のようなイメージ。初年度はベテランママさんのサポート的な役割で恐る恐る参加したが、役割としてはクラスの父兄の代表として、メール連絡、活動費集め、年数回の行事ごとのパーティの企画・運営、授業のヘルプ(先生が必要な時)、年1回の先生感謝イベントの企画、年2回の先生へのギフトのアレンジなど。
おまけとして、担任の先生と仲良くなれたことは良い経験だ。今でもFacebookで繋がり、NY来訪時に連絡をくれる先生もいるし、この時に一緒にやるママさん、パパさんと企画の打ち合わせをしたり、クラス向けに案内メールを送った経験は、その後の英語の勉強にも役立った。
・授業のヘルプ要員
定期/不定期で担任の先生が呼びかける。行ける時に行ける人が行く。
例としては低学年クラスでのグループワーク、Artクラス、Computerクラスでの補助など。
・図書委員
筆者も経験済み。週1回の図書室での授業に同行し、本の貸し出し作業などをヘルプ。司書さんと話したり、生徒の本選びを手伝うのが面白かった。
・各種イベントの手伝い
ブックフェアでの販売業務、Artの展覧会での作品掲示、卒業セレモニーの会場レイアウトづくりなど、イベントごとにPTAを通じて集客がかかる。
・ランチタイムのYard当番
アメリカの学校では基本的に休み時間は生徒は教室から出ないといけない。一方、先生は教室にとどまり、次の授業の準備などをする時間。そのため雨天以外の休み時間はYard(校庭)で過ごすことになるが、それをSuperviseするのは担任の先生以外の人。臨時でそのための人を雇っている学校もあるが、筆者の子供の学校ではランチタイムはボランティア募っていた。子供が遊ぶ様子が間近に見られるので、たまにやるには面白い仕事だった。(子供の喧嘩の仲裁をしなければいけない、なんて場面もたまにアリ)
・遠足時の車出し
アメリカの学校も年2-3回「Field Trip」という遠足があるが、地域によってはバスの手配をせず、「Chaperon(e)」といって、親が数人車を出し、子供が便乗して連れて行く、というスタイルを取る学校もある。筆者の学校もそうだった(個人的によそのお子さんを乗せてドライブするのはちょっと自信がなく、経験なし)。
・イベントや授業で職業経験を話す
これは日本の学校にもあるが、例えば「Science & Math Night」のようなイベントで現職の話をするなど。筆者が以前住んでいたカリフォルニアはシリコンバレーで働くエンジニアのお父さんが多かったので、そういう人材には事欠かなかった印象。
できる人が、できる時に、できることを
アメリカでの活動を見て驚いたのが、PTA/ボランティア共に「平等に」という概念がないところ。日本では「子供一人につき、在学中最低1-2回は」という暗黙のルールが存在することが多いが、アメリカンではそのような考え方はない。そのため、同じ人が数年クラスマザーをやったり、同じ年度に兄弟の学年掛け持ちでクラスマザーをやるなんて場合もあるが、それに対して悲壮感はなく、文句を言う人はいない(そもそも「やりたい人がやる」というスタンス)。
また、ボランティアをやる人は母親に限らず、父親、祖父母、親戚、先生の配偶者、子供など多種多様なのもアメリカならでは(そもそも「保護者=
Guardian」の定義も父母だけではなく、幅広い)。実際に筆者の子供の学校でも生徒の「おばあちゃん」がサイエンスの授業をヘルプしたり(元高校の先生だったという!)、先生の旦那さんがホリデーギフトを持って授業に遊びに来てくれたことがあった。
また仕事や育児の関係でボランティア活動に時間を割けない人もいるが、学校に行っ手伝うことだけがボランティアではない。例えばパーティを実施する時に食べ物や飲み物やグッズ、またはそれを買うためのお金を寄付すること、先生への感謝のための手作りカードを作成すること、クラスの保護者名簿を作成したり、オンライン上での集金を担当することなどは学校に行かないでもできる。
もっと気軽に学校に!
今回のClubhouseでは前回に続き、モデレーターとして、日本のPTA活動に関わる福田さんにもご登壇いただいた。日米比較してアメリカの方がもっと気軽に「できるときにできることを」して関わっている印象だが、福田さんとは「今後日本ももっと、気軽に学校に行ける機会を作れると良いですね」、という話になった。
日本でPTAの役員をやられる方、というと何だか敷居が高く、教育熱心な方、という印象だったが、福田さんご自身は「もっと学校に行ってみたい」「子供の活動が見てみたい」、「子供の前で話をする機会を作りたい」という想いから参加されたとお聞きし、私達の感覚とさほど変わらず、親近感を持った。PTAといっても、案外そういう方が多いのかもしれない。
今後どういう形かまだ漠然としているが「親たちよ、もっと学校に行ってみよう!」というような取り組みができると面白いし、学校も変わっていくのではないかと思う。