マイノリティに光をあてる。ー「フランス映画のすすめ VOL.1」
先月みなとみらいで開催された、フランス映画祭。日本へフランス映画を普及するために、1993年から毎年開催されています。オープニングイベントに参加する機会をいただき、行ってまいりました。
今年の映画祭の団長を務めたナタリー・バイさん。
「最強のふたり」でおなじみの監督エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュさんも来日しました。
映画祭では、彼らの新作「セラヴィ!」と、グザヴィエ・ルグラン監督の「カストディ」を鑑賞してきました。
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「セラヴィ!」
フランス映画祭2018のオープニング作品として上映された本作。昨日7/6から映画館で公開となりました。
舞台は結婚式場。式の運営をするメンバーたちが巻き起こす、コメディドラマです。
開始30分くらいは淡々と結婚式の準備が進んで行くのですが、後半に差し掛かかってからは、もう爆笑の嵐。映画をみてこんなに爆笑したのは初めてかも、というくらいです。
登場人物はみな至って真剣なのですが、そこがまたシュールな面白さを生み出しています。
自分が目立つことしか考えていない、ポンコツの新郎。無能すぎる日雇いワーカー。すぐに癇癪を起こすリーダー。登場人物みんなが問題だらけ。
日常に転がっている笑いのタネを拾い上げるのがとても上手な監督さんだと思います。
上映後のトークショーで終始笑いをとっいらっしゃった監督のお二人は、真のエンターテイナーなのだと思いました。
また本作は、イスラエル出身の世界的ベーシスト、アヴィシャイ・コーエンさんに音楽を依頼したようで、心地のいい曲がたくさん詰め込まれています。そちらにも注目してみてください。
「カストディ」
こちらは、昨年ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した、グザヴィエ・ルグラン監督の作品。
カストディとは、フランス語で「親権」という意味。人間の精神的暴力の恐ろしさを、リアルに映し出す作品です。
「なぜお母さんに会わせない?」
「なぜ目を見て話さない?」
質問責めにされた挙句、荒い運転で父親の実家に連れて行かれてしまうジュリアン。自分が犠牲になれば、お母さんに迷惑はかからないと思っているからでしょうか。息子はお母さんの情報を一切喋りません。
小さな子どもが、ただプレッシャーに耐えている姿を見るのは、とても辛いものがありました。
しかしこれはまだ序の口で、ここから恐怖の物語が幕を開けます。父親の妻に対する感情は、もはや愛情とは呼べず、ただの執着心。
両親にまで見捨てられてしまった父親は、「誰にも愛されない」という最悪な結末に向かって行くことへの恐怖で、ここまで精神を病んでしまったのだと思いました。
誰からも相手にされない、必要とされないというのは、生きていく希望を失う十分な理由になりえます。このような事実を伝えるためには、とても重要な作品だと思います。
また父親の視点に立って見ると、すこし悲しい物語にも見えます。
来年の1月、日本で公開予定です。
フランス映画に興味を持ったのは、やはりグザヴィエ・ドラン監督の作品がきっかけでした。「私はロランス」をみて、今まで観てきた映画とは全く違う切り口と、アートのような演出に驚かされました。
マイノリティの存在にスポットを当てて事実を伝えるというところもフランス映画の大きな特徴なのかもしれません。観る人が同じ境遇ではないとしても、メッセージは伝わるのだと思います。
現に、ドラン監督の作品は、性的マイノリティーの人物を扱うことが多いですが、彼らの葛藤は、生きて行く上で誰もが味わう感情でもあります。
これからも、フランスの個性的な映画にたくさん触れ紹介していきたいと思っています。
「フランス映画のすすめVol.2」では、グザヴィエ・ドラン監督について詳しく書こうと思っています。
こちらの記事は、映画メディア「OLIVE」にも掲載しています。
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