202404 雑記
初めて彼女を観たのは、20年前。
下北沢の駅前劇場。
舞台上で全身から凄まじいエネルギーを発していた。
最高にカッコいいと思った。
その後彼女とは、同じ劇団のメンバーとして一緒の舞台に何度も立つことになった。
わたしの20代は彼女と共にあったと言ってもいい。
彼女の名前は町田マリー。
彼女からはいろんなことを学んだ。
まったくの素人から演劇を始めたわたしが「セリフって、どうやって言ったらいいかわからない」と正直に言ったら「うーん。よく読んで、どういう気持ちか考える、とか?」と、まっすぐな眼で答えてくれたことは今でも覚えている。
おそらくあの人は忘れてるだろうが。
「苦楽を共にした」とか「同じ釜の飯を食べた」とか、まあ簡単に言えばおそらくそんな感じの関係なんだと思う。
友達とはどこか違う。
ただ……劇団で過ごした時間を言葉にするのはひどく難しく、文字にしようとすると物理的にタイピングする手がピタッと止まってしまう。
それでも、一つ言えるのは今のわたしがあるのはあの頃があったからだということだ。
間違いなく、あってよかった時間だと。
彼女が出産し、そして『家庭と演劇の両立』を目指すユニット、パショナリーアパショナーリア(通称パショパショ)を立ち上げた。
パショパショの公演は17才以下の子どもたちは無料、そしてなんと0歳児から入場可能。
お父さんやお母さんと一緒に家族で観劇してね、赤ちゃんが泣いちゃっても大丈夫だよ、というスタイルで行う公演だが、内容は決して子ども向けというわけではない。
特に町田マリーが脚本を書いた作品は、日常を切り取った(そしてなかなかにヘビーな)出来事も赤裸々に出てくる。
ただそれは、気持ちいいくらいまっすぐに、エンタメで包まれている。
だから客席にいる人々はよく笑う。子どもも大人も、一緒に笑っている。
それはかつてわたしに「役の気持ちを考えてみたら?」と言ってくれた誠実さと同じで、身の丈にあった『現在』をきちんと切り取っている、と感じる。彼女なりのやり方で、家庭と演劇の両立を目指そうとしているのだ。
パショパショではこれまで『40才でもキラキラ!』『6姉妹はサイコーエブリデイ』という作品に出演させてもらった。どちらもめちゃくちゃ楽しかった。
そして2024年に入ったある日、町田マリーからストレートにこう言われた。
「ゆらこちゃんがメンバーに入ってくれたら嬉しい」と。
『家庭と演劇』を両立させたいのは子どものいる家だけではない。
「家庭」は「生活」にも置き換えられると思う。わたしは、『生活と演劇を両立』させたい。即答で「ぜひ!」と答えた。
わたしの演劇人生は、町田マリーと出会ってからの年月とイコールでもある。出会い、ともに戦い、別の道を歩み、そして再びわたしの生活に町田マリーがいる。パショパショがある。
仲間に入れてくれたまちどんこと町田マリー、ごめさんこと中込佐知子、どうもありがとう。
そんなわけで、パショナリーアパショナーリアの高野ゆらこが爆誕しました。
20代のわたしたちに教えてあげたい。
まだまだ40代でも足掻きながら一緒に演劇やってるよと。
そしてあの頃のわたしたちを知っている、かつて最前列の桟敷席で血飛沫浴びたり水かかったりしながら応援してくださっていたお客さま方、お元気でしょうか。
パショパショの最前列は子どもたちですし、星型のシールを胸に貼りつけることもありませんがどうぞあの頃と同じ熱量で応援してくれたら嬉しいです。
7月に上演する新作『おもちゃワーカーズ』是非是非よろしくお願いします。町田マリーが描くパショパショ流プロレタリア演劇、お楽しみに……!!!
【高野ゆらこ今後の出演】
◆パショナリーアパショナーリア第6回公演
『おもちゃワーカーズ』
2024年7月6日、7日、13日@中野富士見町ニュー・サンナイ
<<<<<<チケット発売は2024年6月6日(木)!!!>>>>>>