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【第8輪】 積み上げた本に"ゆず"を乗っけて『レモンじゃないんかい!』とツッコまれたら100万あげちゃう!梶井基次郎『檸檬』リスペクト企画!

えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧えつけていた。焦躁と言おうか、嫌悪と言おうか――酒を飲んだあとに宿酔(ふつかよい)があるように、酒を毎日飲んでいると宿酔に相当した時期がやって来る。それが来たのだ。これはちょっといけなかった。

これは、梶井基次郎の小説『檸檬』の書き出しです。

多くの高校生を混乱させた怪書『檸檬』
大まかなあらすじを話しましょう。

正体のわからぬ鬱屈した何かに苦しむ主人公は、かくかくしかじかあって、本屋へたどりつく。そこで主人公は、並んだ本を積み上げ、その上に、持っていた檸檬(レモン🍋)を「爆弾」に見立てて設置。立ち去る。(雑)

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(PR TIMES『~梶井基次郎『檸檬』の舞台「丸善 京都本店」10年ぶりの復活を記念~梶井基次郎『檸檬』を無料で読める!電子書籍無料ダウンロードキャンペーンを実施』より)


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読者の皆さんは、こう思っているのではないでしょうか。

「あれ、この記事、何のメディアだろう?」
「リンク押し間違えたかな…」

安心してください。
ここは、銭湯Webメディア『湯の輪らぼ』のれっきとした記事なのです。

さて、『檸檬』について軽く触れたところで、今回の記事の企画を説明しましょう。

名付けて・・・

本を積み上げ、その上に"ゆず"を置いて「レモンじゃないんかい!」とツッコまれたら100万あげます!!!(円とは言っていない)

少し時間は経ってしまいましたが、12月22日は冬至の日。冬至と銭湯といえば「ゆず」!

そこで、ゆず湯やってますアピールとして『檸檬』リスペクトのオブジェを稲荷湯受付に設置しました(?)

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意味がわからないですか?

この企画説明を書いている僕も、意味がわかりません。

まあとにかく「レモンじゃないんかい!」とツッコまれたら100万(円とは言っていない)をあげなきゃいけない、カイジもびっくりのヒヤヒヤゲームをやります。

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(引用:『賭博黙示録カイジ』, 講談社, 週刊ヤングマガジン)

ツッコまれたくはないけれど、記事の流れ的に、ゆずオブジェの会話を振らなければいけない3代目(仮)のまもると、お客様の攻防。

そこから見えてくる「人生の楽しみ方」という壮大なテーマ。

出オチな記事ではありません。
一大スペクタクルとして、最後までお楽しみください。

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観察日
日時:12/22(水)14:40~22:30
場所:稲荷湯
天気:晴れ(最高気温:13.5℃, 最低気温:5℃)
絶好の銭湯日和と言えるだろう.

【フロントのようす】

フロント_1
フロント _2

クリスマス装飾の上に雑多に積まれた本. 
そしてその上にそびえ立つレモン, ではなくゆず.
見事正解した人への100万は, ちゃんちゃんこ, ではなく, サンタ服を着た湯っぽ君がくれる(はず).

そして, フロントの女湯側にはクリスマス仕様の花が飾られていた.

フロント_3

湯っぽ君, ちゃんちゃんk,,, サンタコスしてないやんって思った方.
そうなんです,  当日は, 企画に集中しすぎて, 写真撮るの忘れたので, 前々日くらいにとった写真を使いました🙇‍♂️

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● 14:40
開店. 
常連さんが入る. 
が, 気づかない...

● 15:55
気づいてほしい, その期待を込めて稲荷湯公式Twitterに投稿した. 
誰か, 気づいてくれ,,,,,,

ツイート_1

⚫️ 17:00
Twitter投稿後, 1時間. 未だに気づく人はいない. お客さんはTwitterを見ていないのか. 
Twitter, もうやらなくていいかな(小声)

フロントに立ち, 
「いらっしゃいませ. 今日は冬至なのでゆず湯をやってます. 」
と言いながら, 視線をゆずに誘導向けてみる.
しかし, その努力も虚しく,  お客さんはゆず湯に吸い込まれるように脱衣所へと向かう. 
そうですよね, 年に一度のゆず湯, すぐ入りたいですよね. その気持ち, わかります. 

⚫️ 18:00
檸檬リスペクトの企画だと気づくどころか, 本が積まれていることすら気づかれない. 
シビレを切らした私は, 自分から話してみた。

3代目(仮)まもる:「本を積んでいるのは, 檸檬の最終場面をゆずで代替して表現しているんですけど, 気づきますか?」
客A:「檸檬ってなんですか?」
客B:「あ, 言われればわかる. 」

こちらから, 話題を振れば答えてもらえる. (少なくとも見てはもらえる)
でも未だに, 自分から 「これなんですか?」とか「これ, ゆず湯だから檸檬ではなくゆずで表現してるんですね?」と言う人は現れない. 

⚫️ 19:00
まもる:「これ, 何を表現しているのかわかりますか?」
客C:「鏡餅」
         終
         制作・著作
         ━━━━━
          ⓃⒽⓀ

たしかに, 見えなくもない.
年末年始だし, CMでもたくさんやってるからな. 
でも, そうじゃないんだ!!!


⚫️ 21:30
閉店1時間前. 結局誰も気づいてくれない, と諦めかけたその時だった.
  
「これなーに?」

声がした方に目を向けると, そこには小学1年生と3年生の姉妹がいた. 

3代目(仮)まもる:「これはね, かくかくしかじかありまして」
妹:「この本読みたい!」

私の説明を聞いていたのかは定かではないが, 彼女が手に取った本は, 現代日本と古代ローマを銭湯で繋ぐ不朽の名作『テルマエ・ロマエ』. 

数ある本の中からそれを選ぶのは, 君, センスあるね?
そんなことを思いながら, フロントでヨーグルトを飲みながら『テルマエ・ロマエ』を読んでいる彼女を眺めていた. その姿はとても眩しかった. 
その時に一つの考えが私の頭に浮かんだ.
  
彼女は, 私にとっての『檸檬』なのではないか...?

その時に思った. そうだ, 今日から君を檸檬ちゃんと呼ぼう. 
檸檬ちゃんは帰り際
「このマンガ, もらっていい??」
とフロントにいる私に尋ねてきた.
檸檬ちゃんの純粋な目に訴えられたら, 誰がNoと言えようか!
私は, 『テルマエ・ロマエ』, いや, 銭湯の未来を檸檬ちゃんに託した.
10分後に爆発はしないでね.

⚫️ 22:30
閉店

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結果
来店者数:162名(男性:104名、女性58名)
檸檬と気づいた人:0名
関心を持った人 :2名(檸檬ちゃん姉妹)


【考察】
・『檸檬』の認知度をはかる以前に, 本の存在に気づいてもらうことが重要である. 
・日常通う場所で小さな変化が起きても気づく人は少ない. 
・大人よりも, 子どもの方が身の回りに起こることについて疑問を持ちやすい. 

【結論】
・銭湯で実験をするためには, お客さんに気づいてもらえるような取り組みが必要である.
・檸檬ちゃんのおかげで, 銭湯の未来は明るい. 

【今回の実験を通じての感想】
・今後何か企画を行う場合は, 気づいてもらえるような仕組みを検討する. 
・経験や知識のまだ少ない子どもは, 持っている情報が少ないため日常的なことに疑問を持ちやすい。また, わからないことがあれば, 疑問を解消しようと, 身近な人に訊く.


【実験振り返りノート】

椅子に座り, 机の上に教科書とノートを広げるだけが勉強ではない.
日常にも学びの種は隠されており, それに気づくことが学びの始まりである. 
だが, 年齢を重ねたり、お店の常連になったりすると, 「当たり前」に感じることが多くなる. 

そのため, 小さな変化は見過ごしてしまいがちである. 
一方で, 経験や知識の少ない子どもは, 「当たり前」に感じることが少なく, 日常的なことに疑問を持ちやすい。
そして, わからないことは調べ, または, 誰かに訊いて疑問を解消する. 
至極当たり前ではあるが, 檸檬ちゃん姉妹に改めて学ばせてもらった.

人生で色々と経験する中で, 良いこともあれば, 知らない方がよかったことや嫌なこととも出会う.
それが積み重なり, 「えたいの知れない不吉な塊」が自身の心を押さえつけるような感覚に苛まれることもあるだろう。

そんな時には, 一旦立ち止まり, 銭湯に来て全てを洗い流してみるのは, いかがだろうか. 
あなたにとっての『檸檬』が, そこにあるかもしれないし, ないかもしれない. 

湯の輪らぼでは, 日常に宿る小さな楽しさを発見し, 心温まるような記事にして皆様にお届けしていきます.

皆様からの実験や企画の要望も募集しております.
アイディアを思いついた方は, 稲荷湯のフロントまたは稲荷湯のTwitterにて, その旨をお申しつけください.
可能な限りやってみます. 
いえ, やらせてください.

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