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もう好きじゃない人へ

「別れよう。もうあんまり好きじゃない」
私は彼に言いました。嘘でした。本当は大好きでした。でもこの人は近い未来にきっと私を捨てるから、捨てられるのは辛くて苦しいから、私から終わりにしようと思いました。彼に説得されたので結局別れられませんでした。本心とは裏腹に引き止めてくれるのを期待していたのも事実だったからです。でもやっぱりあの時別れておくべきでした。しばらくして彼は私に言いました。
「好きかどうかわからなくなったから距離を置きたい」
何言ってるの。好きかどうかわからない時点でもう好きじゃないじゃない。
ほらね、言ったでしょ。馬鹿な女。彼が私を好きなうちに私から捨ててやればよかったのよ。だからもう一度はっきり言ってやった。「私はもう好きじゃない。」思い付く限りの罵倒を添えて。この際だから徹底的に嫌われてやろうと思った。


そういえば私、あなたの好きな曲を一つも知らない。

兄弟っていたっけ?
もっとそんな話をするべきだった。

次のデートで着ようって楽しみにしてた新しいワンピース、一度も着ないまま季節が終わったの悲しかった

私たちってなんだったんだろうね。

私にとっての精一杯の愛情表現だと思って伝えた言葉は、彼には心底軽蔑された。私はとても絶望した。
今までもこれから先もずっと彼とは分かり合えないのだろう。それでいい。
私が間違えた。私が彼に与えたのは愛ではなく、愛のまがいもののような歪な何かを自分勝手に押し付けてただけ。

ずっと傷ついてたこと、ずっと待ってたこと、ずっと寂しかったこと、ずっと我慢してたこと、それでもずっと許してきたこと、わかって欲しかったの。たくさん感情をぶつけてごめんね。信じてあげられなくてごめんね。ずっと好きでいさせてあげらられなくてごめんね。私にとってあなたは世界そのもので、生きるか死ぬかだったんだよ。きもちわるいよね、ごめんね。ごめんねばっかでごめんね。
でもあなたも私に謝ることたくさんあるでしょう。謝ったって許さないから。だからあなたも私のこと許さなくていいよ。


私ね、あなたに会いに行く為の新しいブーツを買っていたの。結局そのブーツをあなたに見せることはなかった。
だからね、たくさん履こうって思う。このブーツでたくさんいろんな場所に行っていろんな人に会っていろんなものを見て、履き潰してやろうって。
だってこのブーツ、私の華奢な脚が映えてとっても素敵だもん。私にぴったり。このブーツを履いたかわいい私の隣を歩けないなんて残念ね。ざまーみろ。
さよなら











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