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一伽さん

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#短編小説

おひさまのにおい

おひさまのにおい

「詩野、出掛けるの?」

小学校から帰宅した詩野は、ランドセルを置いてすぐにまた靴を履こうとしていた。
後ろから掛かる母の声に振り返る。
「ようちゃんちに行くの」
行き先は大人の足なら10分、1年生の詩野の足ではまだ20分以上かかる場所。
母は慌てて車のキーを取りに行った。

手土産にお菓子をいくつか詩野に渡す。
幼稚園からの幼馴染とはいえ、何も持たずに行かせるわけにはいかない。
ここは田舎、町内

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