⑰音色
変わらないものだけが美しいのか。
「変わったね」の一言。
本人には分からないのだ。
自分の瞳が変わっていることに。
変わらないものだけが正義だと盲目的に信じていることに。
ただ鮮やかな記憶の中にある虚像にすがりついているだけだ。
人それぞれの価値観だ。
微睡みの中息をすることを幸福に感じる人もいれば、荒れる波の中先陣を切ることに喜びを得る人もいる。
置いてきた春に後ろ髪を引かれる。
自分の中の「大切」は誰にも傷付けさせない。
また、戻ることが出来なかった。
動かない空気に悲壮感を覚える。