ブルックリン
数ヶ月ぶりの喫茶店に向かう。
韓国で買った緑のチェックのネルシャツを着るためだ。
10月だと言うのにまだ暑かったが、一昨日あたりから夜は急に冷え込んできた。
白のTシャツの上に羽織る。
下はギャバのドガジャン、スニーカーはまだ買ってないので、昔から履いている黒のアディダス。
靴下は箱から摘み出しただけのあずき色を履いている。ちゃんと選べばよかったと少し後悔している。
ここは、ニューヨークの姉妹店で、本店には行きそびれた。
スタッフは、二人とも新顔だった。
鼻にピアスをしたドレッドヘアーの男の子と、おしゃれな女の子。花屋の店員もいつもの顔だった。
鼻ピアスは僕には牛にしかみえないが、何故するのかは、恥ずかしくてきけない。
ドレッドヘアーも、どこからどう発生してたどり着いたのか。僕は知らない。ボブマレーではなかろう。
川床に出る。対岸では、トランペットを吹いている。何の曲かわからない。旋律の練習なのか、ただの下手くそなのか。
犬を連れている夫婦、サッカーボールを蹴っている子供。
日傘をさしている女性。
シナモンロールを食べていると、スズメが寄ってきた。
ここのスズメは人懐っこい。
パンくずを投げると、その場でついばむ。
手に乗せて、近寄せてみるが決して手の上には乗らない。
僕の心が不純なせいかもしれない。
「僕はブッダ」と、心の中で呟くがやはり来ない。
手塚治虫のようにはいかない。
クロアチアの鳩は、極端に警戒心が強い。
2メートル以内には、まず近寄って来ない。
逃げ方も、少し離れるだけでなく、別の屋根まで移動する。
スズメも同様だ。
料理に使われるからかな、と思いながら焼きとうもろこしを公園であげていた。
テラスにいる人は、ほとんどアジアからの観光客。
ガイドブックに載っているのだろうか?
僕はガイドブックに載っている店には行かない。
大きな声で談笑しているが、耳障りではない。
何を喋っているかわからないからだろう。
トランペットの音色が止み、散歩の人もまばらになった。
彼女にばれる前に家に戻ろう。僕のシャツには誰も気に留めない。