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【晩夏のゾーッとするクラシック・9】ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」/ズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニック【華麗なる音画】

華麗なる音画としての「展覧会の絵」

前回に続いてムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」です。
スヴェトラーノフ&ソヴィエト国立響の「展覧会の絵」はロシアの野趣あふれる雰囲気の演奏でしたが、今回のズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏は、モーリス・ラヴェルの華麗なオーケストレーションを最大限に生かした演奏です。

ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」
ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」
ズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニック
ジャケット表

曲目と演奏者

モデスト・ムソルグスキー
・組曲「展覧会の絵」(モーリス・ラヴェル編曲)
  プロムナード~こびと~プロムナード~古城~プロムナード~
  ~テュイルリーの公園にて~ビドロ~プロムナード~
  ~殻を出きらないでいるひな鳥のバレエ~
  ~金持ちのユダヤ人と貧乏なユダヤ人~リモージュの市場~
  ~カタコンブ~死者の言葉による死者への語りかけ~
  ~バーバ・ヤーガの小屋~キエフの大きな門
・舞踏詩「ラ・ヴァルス」
ズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニック

ズービン・メータ

ズービン・メータは1935年インドのボンベイ生まれ。小澤征爾とともに、アジア出身で初めてクラシック音楽界で世界的な成功を収めた指揮者です。名門ウィーン・フィルやベルリン・フィルからの信頼も厚く、90歳になろうとする現在も元気で活躍しています。

若き日のズービン・メータ
ロサンゼルス・フィルと録音した「ツァラトゥストラはかく語りき」

若き日のズービン・メータ。カッコいいでしょ?「Sexy Conductor!」と女性からの人気も抜群でした。
個人的にこの人は・・・・出来不出来の差がけっこう大きい指揮者と思っていますが、オーケストラから豊かな音色を引き出す手腕に長け、うまくいったときは豊麗で美酒に酔いしれるような演奏を楽しませてくれます。

メータ&ニューヨーク・フィルの「展覧会の絵」

メータはこれ以前に、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団と「展覧会の絵」を録音しており、これが再録音になります。メータがニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督に就任した直後の1979年1月に録音されました。
曲の冒頭、トランペットで奏でられる「プロムナード」の晴朗なこと。続く「こびと」もゴリゴリと鳴る低音弦楽器が威力を発揮します。「古城」で聞かれるアルト・サクソフォンのソロも明るい音色です。
リモージュの市場→カタコンブ→バーバ・ヤーガの小屋→キエフの大きな門の矢印で示した曲間は短い休止を入れることが多いのですが、メータは間髪を入れず次の曲に入っており、一瞬のうちに曲想が変わる緊張感を演出しています。
とにかく、どこまでも晴朗にして華麗。オーケストラを聴く楽しみを味わわせてくれる演奏です。

思い出のレコード

メータ2度目の「展覧会の絵」の録音は、あまりよい評価ではありませんでした。評論家曰く「音色が明るすぎる」「ロシア音楽の野性味がどこかに消えてしまった」「録音がよくない」etc・・・・
でも、ラヴェルのオーケストレーションの醍醐味を味わうのも、この曲の楽しみ方の一つと思うのですが。
「録音がよくない」という評価については、私の愚耳にははっきり言ってよく分かりません。

何よりこのレコードは、私が高校合格祝いに買ったレコードなので思い出深いのです。上記の感想に「思い出補正」が多分に入っていることは認めます。

ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲「展覧会の絵」
ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」
ズービン・メータ&ニューヨーク・フィルハーモニック
ジャケット裏

ジャケット・デザインは国際的グラフィック・デザイナーの粟津潔

目の覚めるようなジャケット。なんと、国際的なグラフィック・デザイナー粟津潔のデザインです。
1970年代から80年代にかけてのジャケットは、一見して目を奪われるような強烈な個性が目立ちました。

<次回予告>
【晩夏のゾーッとするクラシック・10】グリーグ:「ペール・ギュント」第1組曲、第2組曲/ヘルベルト・フォン・カラヤン&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団【北欧のアドヴェンチャー】

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