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レオポルド・ストコフスキー&フィラデルフィア管弦楽団 / ストラヴィンスキー:春の祭典(1929年録音)

2013年(平成25)にアメリカのSONY CLASICALから「”春の祭典”初演100周年記念BOX」というBOXセットが発売されました。その中から特に印象に残った5種類を順次紹介していきます。第1弾は、なんと1929年に録音されたレオポルド・ストコフスキー&フィラデルフィア管弦楽団のSP復刻版。今から95年前の録音です。

SONY CLASICAL「”春の祭典”初演100周年記念BOX」

タイトルのとおり、「春の祭典」世界初演100周年を記念して発売されたBOXセットです。アメリカCBSとアメリカRCAが原盤を所有する「春の祭典」音源から10種が選ばれて、オリジナルデザインの紙ジャケットに封入されています。下記がその全10タイトルです。太字のCDがこのシリーズで取りあげる演奏で、カッコ内の年号は録音年です。
・レオポルド・ストコフスキー&フィラデルフィア管弦楽団(1929年)
・イーゴリ・ストラヴィンスキー&ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団(1940年)
・ピエール・モントゥー&ボストン交響楽団(1951年)
・ユージン・オーマンディー&フィラデルフィア管弦楽団(1955年)
・イーゴリ・ストラヴィンスキー&コロンビア交響楽団(1960年)

・小澤征爾&シカゴ交響楽団(1968年)
・ピエール・ブーレーズ&クリーヴランド管弦楽団(1969年)
・レナード・バーンスタイン&ロンドン交響楽団(1972年)
・エサ=ペッカ・サロネン&フィルハーモニア管弦楽団(1989年)
・マイケル・ティルソン=トーマス&サンフランシスコ交響楽団(1996年)

レオポルド・ストコフスキー

レオポルド・ストコフスキー(1882.4.18~1977.9.13 レオポルド・ストコフスキー - Wikipedia)はイギリス出身のアメリカで活躍した指揮者。

レオポルド・ストコフスキー

1912年から1940年まで28年にわたってフィラデルフィア管弦楽団の常任指揮者を務め、アメリカの田舎オケに過ぎなかった同団を世界有数のオーケストラに育て上げた。ストコフスキーがアメリカ初演を手がけた曲は、「春の祭典」をはじめ、数多い。
指揮者の左側に第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが並ぶ現在多く用いられているオーケストラ配置を始めたのがストコフスキー。
最晩年の1976年、94歳の時にアメリカCBSと6年契約を結び、本人は100歳までレコード録音を続けるつもりで意気軒昂だった。

ストコフスキー&フィラデルフィア管の「春の祭典」

レオポルド・ストコフスキー&フィラデルフィア管弦楽団
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」 SP復刻

この演奏は1929年の録音で、今から95年前の録音です。
当時はLPレコードより前のSPレコードの時代です。マイクロフォンを使っての録音が実用化されたばかりの頃でした。当然、ステレオではなくモノラルなので音の広がり感や奥行き感はなく、針音ノイズも目立ちます。
また、当時のマイクロフォンの性能の限界のため、「春の祭典」で大活躍するティンパニやバスドラム、シンバルの音は弱く抑えられています。
それなのに・・・・貧しい音の中から伝わってくる熱気や迫力、分厚い弦や咆哮する管楽器のすさまじさはただ事ではありません。それでは音量が大きいだけの粗っぽい演奏かというとそうではなく、フィラデルフィア管の合奏力も驚異的です。
しかもすごいのはそれだけではありません
当時は現在のデジタル技術を用いた編集技術は当然なく、テープに録音して編集する技術も発明されていませんでした。つまりこの演奏は、録音用マイクに向かっての一発録りなのです(間違ったらそのまま または録り直し)。
この演奏が録音された1929年は、「春の祭典」が初演されてからわずか16年後。以前に「1960年代までは、”春の祭典は、わけの分からない現代音楽”として受け止められていた」と書きました。初演から100年以上経った今でも、オーケストラと指揮者にとって難曲であることに変わりはありません。ところが、今から90年以上昔にこんな完成度の高い演奏が実現していたのです。しかも一発録りで・・・・
失礼ながら、現在発売されている「春の祭典」のCDの中には、この演奏よりも完成度の低い演奏、粗い演奏はたくさんあります。
古い録音ですが、ストコフスキーのバトンテクニックの高さとフィラデルフィア管の合奏力の凄さを目の当たりにできる驚異の演奏です。

レオポルド・ストコフスキー&フィラデルフィア管弦楽団
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」 SP復刻

次回予告 ピエール・モントゥー&ボストン交響楽団 / ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」(1951年録音)

モノラル録音ですがこれもすぐれた演奏。初演時の指揮者ピエール・モントゥーによる演奏です。

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