若桜の身投げ淵
鳥取県東部、若桜の街並みの郊外に、「庄瀬(庄ノ瀬)」という地があります。ここに美女の身投げ伝説がひっそりと伝わっています。
身投げ淵
この伝説は地元で今も語り伝えられているかは不明ですが、安陪恭庵の『因幡志』に記述があります。
"山崎甲斐守が若桜の城主だった頃、城内で酒宴が開かれていた。
城付きの女官たちが酌をして回っていたのだが、ある美しい女が酌をしようとしたときに、足もとの簀の子が「キィ」と音を立ててしまった。この音を聞いた一同が女を見て笑い転げた。女が放屁したと思ったのだろう。
このことを恥じた女は城を抜け出し、庄瀬の崖の松の樹に衣を掛け、身投げをしてしまった。それ以来、女が身投げした淵を身投げ淵と呼ぶようになった。"(因幡志の記述を現代語訳)
「わかさ観光ガイド」というサイトにこの伝説が紹介されており、そこでは身投げをした女の名前は「お庄」とされています。
・庄ノ瀬 | わかさ観光ガイド - 若桜町観光協会 〜ぷらっと若桜(わかさ)にきんさいな〜 (town.wakasa.tottori.jp)
若桜の町には「若桜鬼ヶ城」という城があり、江戸時代初期には山崎家盛→山崎家治が城主でした。「甲斐守」を官職にしていたのは、2代目城主の山崎家治です。山崎家治が若桜鬼ヶ城の城主だったのは、1614年(慶長19)から1617年(元和3)までのわずか3年間です。
この伝説はその3年の間の出来事です。
なお、山崎家治は1617年に備中国成羽へと移され、若桜鬼ヶ城は廃城になりました。
身投げ淵は、若桜鬼ヶ城のある鶴尾山の南側にあります。
女が身投げする時に衣を掛けたという松の樹は、今は残っていません。
淵はけっこう深く、上からの落石の危険もあるとのことで、、トップ画像のように遊泳禁止になっているのですが、数人の若者が上半身はだかで淵を泳いでおり、撮影のタイミングに困りました。
彼らが一斉に淵に潜っているタイミングで撮影した画像です。
身投げ淵の対岸は若桜中央公園になっており、春には桜の名所のようです。
河原では2組ほどの家族連れがBBQを楽しんでいました。
周辺には、身投げ淵の伝説を記した解説板などは設置されていませんでした。
道の駅若桜「桜ん坊」
近く(と言っても若桜の町自体、そんなに大きくない)に道の駅若桜「桜ん坊」という施設があり、そこでは地元の野菜やフルーツ、民芸品が販売されています。
若桜は鹿や猪のジビエ料理や町内の吉川地区で育てる吉川豚のベーコン、ソーセージを名産として売りだそうとしています。
道の駅の食堂では「手づくりベーコンわかさカレー」を供しており、ぜひ味わいたいと思ったのですが・・・・残念ながらこの日はやっておらず、替わりに鹿肉カレーを。
ところで、焼き場系Vtuverのさいば萌さんの最新動画で尾道市の火葬場が紹介されていますが、そこに寄せられたコメントに「道の駅若桜周辺に火葬場跡がある」という気になる情報がありました。
・【竪穴式】有名だけど謎の集落火葬場「昇天閣」 (youtube.com)
知っていたら場所を調べて、見つかれば行ってみたのですが・・・・。
「手づくりベーコンわかさカレー」と合わせて、次回の若桜町訪問時に期待です。
身投げ淵の場所
<参考資料>
・因幡志 著:安陪恭庵 世界聖典刊行協会 1978年(昭和53)9月14日
・若桜町観光協会 庄ノ瀬 | わかさ観光ガイド - 若桜町観光協会 〜ぷらっと若桜(わかさ)にきんさいな〜 (town.wakasa.tottori.jp)
次回予告 浜坂の千匹狼
地元でもあまり知られていない伝説ですが、鳥取砂丘に近い浜坂に千匹狼がいたという言い伝えがあります。