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辺見庸の『月』 【宮沢りえ、磯村勇斗、オダギリ・ジョー、二階堂ふみ】

1年前に見た映画ですが、賛否両論を巻き起こした大問題作。
私ですか?3回見に行きました。見て楽しい映画ではありませんが、深く深く考えさせられる映画と思います。


パンフレット表

辺見庸の『月』

辺見庸(1944.9.27~ 辺見庸 - Wikipedia)の『月』は、2016年(平成28)7月に起きた障害者施設殺傷事件を題材にして書かれた小説で、映画化作品は2023年(令和5)10月に公開されました。
主人公・洋子=宮沢りえ、彼女の夫=オダギリ・ジョー、さとくん=磯村勇斗、施設職員の陽子=二階堂ふみ
重要人物4人を名優が演じています。特に「さとくん」を演じる磯村勇斗は、「俳優生命を絶たれるかもしれない」という覚悟で「さとくん」を演じたといいます。まじめで入所者思いだったさとくんが、施設内で他のふざけた職員からのいじめに遭い、だんだんと壊れていく様子、ついに凶行に走る場面は鬼気迫るものがあります。でも、それ以前にもどこか危ない言動を垣間見せてはいるのですが。


パンフレット中面

この映画のキャッチコピーは「この刃はあなたに向かっている」だったか。
とにかく重い。暗い。この映画が賛否両論、どちらかと言えば否定的な見解が多かったのも分かる。施設の方が「こんな施設、こんな職員ばかりだと思われるのは心外だ」と怒るのも分かる。
ただ、ここで描かれる施設の内情や一部職員の施設入所者への陰湿な人権侵害行為が、まったくの絵空事かといえば、それは違う。くわしくはここでは書きませんが。
いろいろな意味で「この刃はあなたに、私に、心の奥に向かっている」。


パンフレット裏

映画のラストで、動くことが出来ず、話すことも出来ない、施設で暮らすわが子を「さとくん」に惨殺された老いた母親(高畑淳子)が、血の海と化した施設のロビーで泣き崩れる。
彼女の慟哭が、この暗く、重い映画が問いかけるものへの回答であり、「障害者は人ではない」と言って凶行に及んだこの事件の犯人および「犯人の気持ちも分かる」などと許されない暴言を口にした一部の人たち、さらにその発言を声高に支持した人たちへの、これ以上ない回答と考えます。

次回予告 カラヤン&ベルリン・フィル/ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」 【音楽評論家の悪評集 Part2】

20世紀クラシック音楽の最高傑作とされるストラヴィンスキーの「春の祭典」。カラヤン&ベルリン・フィルもこの曲を録音しているのですが、カラヤンの「春の祭典」は、日本の音楽評論家の悪評のターゲットになりました。
マゼールの「第9」で、評論家たちが書いたすさまじい悪評を紹介しましたが、その表現の度外れた非常識ぶりがおもしろかったので、評論家の悪評集をまたやります。

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