フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ / モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」&歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」序曲
モーツァルトの最後の交響曲の名演奏。
ブリュッヘン&18世紀O / モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」
ブリュッヘン&18世紀Oが録音したモーツァルト最後の交響曲、第41番「ジュピター」。
「ジュピター」の演奏時間は通常は30分ほどなのですが、ブリュッヘン&18世紀Oは楽譜に記されたリピートをすべて実行しているため40分ほどかかります。正直、第2楽章は「ちょっと長いかな-」と感じる面がありますが、厳しい表情を見せる第1楽章や典雅なだけではない第3楽章「メヌエット」、そして次々に増殖するフーガで締めくくられる第4楽章は、リピートがあるために「もう一度あの場面が聴ける!」と胸が躍ります。
前の記事(フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ / モーツァルト:交響曲第40番&ベートーヴェン:交響曲第1番|Yuniko note)で「ベートーヴェンは突然変異的に登場したのではなく、モーツァルトの音楽的なDNAを受け継いでいる」と書きましたが、このCDを聴くとモーツァルトとベートーヴェンの違いがはっきりと伝わります。
ベートーヴェンは穏やかなメロディーであってもある種の緊張感をはらんでいますが、モーツァルトの穏やかなメロディーはどこまでもたおやかです。
ベートーヴェンの築くクライマックスは音の塊、和音の連打が次々にぶつかってくる感じですが、モーツァルトの築くクライマックスは主要テーマの増殖による波状攻撃です。
モーツァルトの交響曲は、現代のコンサートでは大交響曲や大管弦楽曲の前プロとして取りあげられることが多いですが、少なくとも交響曲第41番「ジュピター」はコンサートのトリを務められるだけの風格を備えていることが分かります。
CDで「ジュピター」の後に演奏されるのは、モーツァルトの最後の歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」の序曲。正直、歌劇「魔笛」の序曲を演奏してほしかったなーと思う面もありますが、ブリュッヘン&18世紀Oはモーツァルトの最後の交響曲と最後の歌劇というテーマでこのCDを制作したのでしょう。
歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」は、台本が古風な題材であること、作曲期間が短く、弟子も協力して作曲されていると見られることなどから、モーツァルトの最後の歌劇であるにもかかわらず一段低い評価を受けています。ですが、ここでの序曲の演奏は威厳ある演奏だった「ジュピター」に続く立派な演奏です。
次回予告 フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ / ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
ブリュッヘンと18世紀Oが目標としたベートーヴェンの「英雄」の演奏と録音がついに実現。