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ヨーゼフ・カイルベルト&NHK交響楽団 ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」

第9番「合唱」のセッション録音を遺さなかったカイルベルトですが、1965年に初来日したときのN響とのライヴがCD化されています。

カイルベルト&N響の「第9」

ヨーゼフ・カイルベルトは1965年12月にNHKの招きで初来日し、NHK交響楽団の第9公演を指揮しました。このCDに収録されているのは1965年12月25日の東京文化会館での演奏です。
これがカイルベルトとN響の初顔合わせだったのではないでしょうか。

ヨーゼフ・カイルベルト&NHK交響楽団ほか
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
ジャケット表
ヨーゼフ・カイルベルト&NHK交響楽団ほか
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
ボトムカード

演奏については、前項の「ベートーヴェン交響曲選集&序曲集」(ヨーゼフ・カイルベルト&バンベルク交響楽団ほか ベートーヴェン交響曲選集&序曲集|Yuniko note)で述べたことが当てはまります。大仰な演出効果や派手な音響効果は一切ありませんが、おだやかな起伏の中に音楽が豊かに歌われ、第4楽章「歓喜の歌」の大きな感動に導かれます。
カイルベルトが第9番「合唱」のセッション録音を遺さなかったのは残念ですが、日本での第9の名演が遺されていたのは幸いでした。

この名演からわずか2年8か月の後。1968年の7月20日に、カイルベルトはバイエルン国立歌劇場でリヒャルト・ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」を指揮している最中に急性心不全で倒れ、天に召されたのでした。この時、カイルベルトはまだ60歳。指揮者として、いよいよこれから円熟の至芸に磨きがかかっていくという年齢でした。

亡くなる数ヶ月前、カイルベルトは婦人に「今度また日本に行って、ベートーヴェンの交響曲を全曲演奏するんだ」と語っていたといいます。
NHK交響楽団が三たびカイルベルトを指揮台に招き、ベートーヴェンの交響曲の全曲演奏を計画していたのでは、とささやかれています。このうわさが事実だったとすれば、カイルベルトのあまりにも早い死によってN響とのベートーヴェン交響曲全曲演奏会が実現しなかったのは、返す返すも残念でなりません。

カイルベルトの第9はもう一種類、ケルン放送交響楽団とのスタジオ・ライヴ(モノラル)も遺っていて、それもCD化されています。
さらに、アテネでの第9演奏会も放送録音が遺っているといわれているので、そちらもCD化されないものかと思っています。

次回予告 バイロイトの第9-ヴィルヘルム・フルトヴェングラー&バイロイト祝祭管弦楽団ほか

日本では年末になるとベートーヴェンの第9があの町この町で演奏されます。それに便乗したわけではないのですが、強く心に残った第9のCDを紹介していきます。
1回目は伝説の名盤とされているフルトヴェングラー&バイロイト祝祭管弦楽団の第9(1951年録音)。

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