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マインクラフトという世界

3年前の春に、我が家に任天堂Switchがやって来た。
長女が誕生日プレゼントにこれをチョイスしたからだ。

その時ちょうど家族で見ていた「よゐこのマイクラでサバイバル生活」に影響を受けて、ソフトも同時に購入した。

改めて語るまでもないけれど、マイクラほど開始時に途方に暮れるゲームもない。

【マイクラの凄いところ!1】
どこまでも完全な自由。

主人公を待つ王様も、お姫様も、仲間も、誰もいない。攻撃してくる生き物はいるが、彼らもただ生きているだけなので倒す必要性は全くない。(人のいる村を見つけたり見つけなかったりするが別に仲間というわけでもない)

とりあえず土を掘ってみる。木をポカスカ叩いて伐採する。動物を追いかけ回す。
なにが正解だか、わからない。
この世界で何かをなさねばならぬ。それだけがわかっている。
太古の昔、人類がまだ一匹のサルだったころの気持ちはこんなふうだったのかも知れない、と地球の歴史と数百万年の時の流れを考える。(よゐこのお二人の番組を見ていてすらこの体たらく、自由というのは実は怖いものだ)

さてゲーム上でまず最初に与えられた命は、空腹だか動物かモンスターに攻撃されるだかして、長くてもマイクラ内時間2日目くらいで尽きる。

【マイクラの凄いところ!2】
命尽きる瞬間に、持っているアイテムを全部その場にぶちまけて、肉体が消滅する。

まさに色即是空、空即是色。
どれだけプレイして他の様々の事柄が作業と化したとしても、不意に訪れるこの瞬間だけは「命は有限だった」と、いつも冷水を浴びせられたような新鮮な衝撃にビックリする。

もちろんゲームだからコンテニューすれば十秒も経たずに生まれ直して来ることができるし、前のキャラで建てた建造物や、収納箱にいれた道具はそのまま残る。
(ぶちまけたアイテムは一定時間中に拾いに行けば回収可能。しかし力尽きた場所と生まれてくる場所は違うので、この地点が遠いと、落命場所を探しに行く旅となる。ある程度時間が経つとアイテムは消えてしまう)

我が家の3人の子どもたちは、これを幾度か繰り返し「なんとか長く生きよう」という考えに至ったらしい。

子を観察してる母としては感無量である。

つい数年前《おぎゃあ》と生まれ、ただ泣いているだけだった存在が、自らの意思によって、工夫とあらゆる手段を用いて、ゲームの世界の中のキャラクターを生き永らえさせようと考えているのだから。

 長生きのためには、襲ってくるモンスターから身を守るために家を建てたり、眠るためのベッドを作ったり、空腹を満たすために食料を集めたり、食料の調理や金属の練成のためのかまどを作ったりすることが大切になる。
(もちろんどれもこれも自由なので、やってもやらなくてもいい)

【マイクラの凄いところ!3】
きちんとバランスがとれていて、人類の進化の過程を追っていくようになっている。
最初に木で作っていた道具が石になり、鉄になり…。

農業をはじめて食料の調達や備蓄が整い生活が安定し始めた時点で、それまで生きることのみに必死だった暮らしから、ゆとりが生まれて余暇を楽しみ始める。
野の花を摘んできたり、ベッドに色をつけてみたり、川を作ってみたりし始める。

姉弟で作業を分担して大きな家を建てたり(協力!)
ピンチになった時はパンや肉を分け与えたり(助け合い!)
予期せぬ不運で道半ばにして倒れた時は、アイテムを拾って持ち帰ったり(相続…)

しばらくプレイして私は人の営みをゲームの中に閉じ込めたマインクラフトに、つくづく感心した。

それから数週間は遊んでいたが、そのうち日々が忙しくなり子どもたちのマイクラを見ているだけになった。

先日久しぶりにワールドに加わった。私がどのボタンでどう動くのかおぼつかない手付きで覚え直していると、成長した子どもたちが私に優しくしてくれて嬉しかったので覚え書き。

末っ子長男「お母さんは僕と一緒に居ようね。僕が敵から守ってあげるからね」…騎士か⁉
次女「石炭とりに、山崩してくるわ」産業大臣!
長女「じゃあ私は畑を作る」農林水産大臣!

末っ子長男「夜になるまえに穴を掘って、一晩隠れるところ作ろう」ナイス計画性!
次女「じゃあ、ウチがそこでかまど作って肉焼いたげるわ」ナイスサービス精神!
長女「私は畑のそばに拠点を作ったから心配せんといて」ナイス自立精神!

子どもたちは私には追いつけないものすごい速さで、さまざまな道具をクラフトしていく。
なるほど子孫とは生命のバージョンアップなんだろうか、と自分の前世代的なゲーム操作の下手さにちょっとしんみりした午後だった。


【マイクラの凄いところ!4】
人間性があらわになる。

例えば夫は洞窟に潜ったまま、ある一定の深さを碁盤の目に掘り進めることに夢中になる。(ダイヤモンドが出てくると、目印を置いて周囲を掘り、子どもたちが掘れるようお膳立てをしている)
私は、家を上へ上へと増築して塔に似た何かを作り始める。
(上へ登っていくほど静かで心落ち着く気がして、登って沈む太陽や、登って沈む月の光を浴びて、ただひたすら上へ積んで行く。たまに子どもたちがどこまで高くなったのか見に来てくれる)

ごくごくたまに夫の様子を見に行くこともあるが、ただ掘り進める姿にまめだなあと感心して、すぐに塔作りに戻る。
気が向いたらこっそり塔の地下を掘って夫の洞窟と繋げておき、驚かせるついでにパンを差し入れたりする時も。(私が行かなくても子どもたちがたまに会いにいき食料や木の素材など差し入れてるようだ)

どんな人か知りたい人と(例えば恋人とか)一緒に遊んだら、隠れている一面が見れる気がする。

最後に
【マイクラの凄いところ!5】
BGMが良い。

すごく落ち着く。SEもいい音が多い(たまに大きい音のものもある。エンダードラゴンの鳴き声とか)
細切れ睡眠法の私が言うと説得力が皆無だが、手放しで眠くなれる。
終わるのも、始めるのも、自由なので。