遠い君は、その緑を知っているだろうか
――今の子供は、自然を知らない。
都心のオジさんがテレビで流す言葉に、地方のオジさんは苦笑いする。
今の子に限らない、と。
自然のない場所で、人は知ることが出来ない。
それだけだ。
「いつ来ても、東京は土がないな」
そう呟くと、同行していた東京生まれの後輩が苦笑いで言った。
「そりゃ、新橋と赤坂しか歩かないからですよ」
「でもなぁ」
それでも俺は納得いかず、続けてしまう。
「この前、こっちの人と話していたら、実をつけたばかりのトマトの写真見て、変なピーマンですねって」
「そりゃ、園芸もやらない人だったらそうでしょう」
「だからさ、自分の知る範囲が全部なんだよ。俺は畑があるのが当たり前だからな」
頷き、後輩はあれ、と思い出したように声を上げた。
「でも、先輩のお子さんは東京って……あ」
しまった、と口をつぐむ彼に、今度は俺が苦笑いになった。
「アレもそう言うのかねぇ」
そうだったら、俺は少しだけ、寂しいのかもしれなかった。