7年ぶりに公式に旧姓を取り戻した話_住民票とマイナンバーカードの旧姓表記の記録
先日、最寄りの役所で申請し、結婚届を提出して以来7年ぶりに、公式に旧姓を取り戻しました。日本の結婚制度では、男女いずれかの姓を選択する必要があります。私の場合は婚姻届を提出する際に夫の姓を選択したので、その時点で旧姓を証明する公式な書類は喪失しました。このnoteでは、住民票及びマイナンバーカードへの旧姓表記と、私がそこに至る経緯をまとめました。尚、私の旧姓名は工藤ゆか、戸籍上の姓(=夫の姓)は仮に八木、とします。
旧姓表記について
意外と知られていませんが、住民票やマイナンバーカードに旧姓の表記ができます。今回私は旧姓表記を申請したことで、八木[工藤]ゆか、と表記されることになります。
他にも公に利用できる身分証明書で、2024年現在、旧姓が併記できるのは以下の3つです。
住民票・マイナンバーカード(個人番号カード)
運転免許証
パスポート(旅券)
パスポートについては併記可能ではあるものの、上記2つと比較すると少しハードルは高いようです。
結婚=公の旧姓の喪失
住民票及びマイナンバーカードに旧姓併記ができるという政令、実は平成31年11月5日に施行されたもので、意外とつい最近。私が婚姻届を提出した時点では、旧姓併記は認められていませんでした。公には八木(戸籍上の姓)のため、法律上は工藤ゆかである私はこの世に存在しなくなります。旧姓の喪失です。どうしても旧姓を証明したい場合、戸籍抄本(全部事項証明書)を発行する必要があります。ですが、戸籍抄本は手続きしなければ本籍地の自治体に発行依頼する必要があり、発行料もかかるため、ハードルが高いのが現状です。
そして余談ですが、婚姻届提出後すぐに襲ってくるのが怒涛の名義変更手続きです。男性は意外と知らない方が多いのですが、これがめちゃくちゃ大変。ウォーターフォール型に手続きを進行する必要があり、膨大な時間と手間がかかります。まず最初に変更するのが銀行口座の名義。従来型の銀行は郵送で書類提出が必要なため、印刷して記入して押印して書留で送り・・・と思ったら実印を変更してなかった!ということでまずは新姓の実印を作り直し・・・などなど、やる事盛りだくさん。無事銀行口座の名義変更が終わったら、次はクレジットカード。クレジットカードが完了したら、次は各種インターネットサイトや、サブスクリプション契約の名義変更を行います。このように、段階的に変更していく必要があり、都度書類の記入、提出が必要なため、私の場合、全ての名義変更が完了するまでおよそ1ヶ月ほどかかりました。
ビジネスネーム≠戸籍上の姓
私は35歳で結婚し、その後フリーランスという生き方を選択したため、結婚後もビジネスは旧姓で続けてきました。ビジネスネームとして旧姓を使い続けたのは、これまでのキャリアや、友人知人との関係性を手放したくなかったのが最大の理由です。もう少し若い時に結婚し、八木(戸籍上の姓)でキャリアを築くことができれば状況も変わったかもしれません。しかし35歳にもなると、今までのキャリアや人間関係をリセットして新しい姓で仕事をするのは相当勇気が必要な選択でした。ちなみに、研究者としてのキャリアを積んでいる友人は、姓の変更により研究実績がリセットされることを避けるため、婚姻届を提出する法律婚ではなく事実婚を選択しています。
個人事業主は屋号が設定できるため、屋号として旧姓を登録されている方もいらっしゃると聞きます。でも正直、自分の名前なのに屋号って何だよ、という感が否めません。法人口座は屋号が設定できる一方、確定申告や一部行政の仕事の入金先には、戸籍上の個人名と一致する名義の口座=個人口座しか指定できません。個人口座の名義は「八木ゆか」なので、普段業務を委託している「工藤ゆか」の振り込み口座名義が「八木ゆか」であるという齟齬が生じます。よって、毎回毎回「ビジネスネームは工藤ですが、戸籍上の姓は八木でして、こちらの口座名義に齟齬はありません」と、書き添える必要があります。請求書を発行する度、マイナンバーの控えを提出する度、契約書に押印する度・・・もう100回以上はメールにこの言い訳を書いてきました。これが本当に面倒だし、自分の名前なのに言い訳しなければならない事に地味に精神が削がれていきます。
私は、私が思う、私でいたいだけ
そしてついに、堪忍袋の尾が切れて重い腰を上げて、旧姓表記の申請に行きました。申請自体は紙一枚、マイナンバーの書き換えを含めても1時間弱で終了する手続きです。こうして、7年ぶりに私は公に旧姓を取り戻しました。法律上取り上げられていたものを、取り返したのです。もちろん、まだ銀行口座もパスポートも戸籍上の姓も「八木ゆか」だし、「ビジネスネームは・・・」の言い訳はこれからも必要でしょう。でも、何だかとても、気持ちが楽になりました。それはきっと、私が思う、私でいられる公の証明が手に入ったからだと思います。
2022年時点でも、法律婚をした夫婦のうち95%は女性が男性の姓に変更しているそうです。一方で、「積極的に結婚したいと思わない理由」として「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」と回答した独身女性は20~30代の1/4、40~60代の1/3にのぼるそうです(内閣府男女共同参画局)。
私は、私が思う、私でいたいだけ。少しずつですが、私の思う私でいられるような、環境整備が進んでいくことを期待しています。
*本noteは私の経験をもとに記載したものです。万が一、政令や行政手続き上で認識が誤っている箇所があれば教えてください。
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