サンタクロース
これは世界最大級の嘘である。
世界中の大人が一丸となって世界中の子供達に嘘をついているのだ。
子供番組はもちろん、真面目なニュースでも。学校の先生も、近所のおばちゃんも。
遠い北欧の映像も。
ああ、なんて素敵な嘘なんだろう。素敵嘘のお陰で小学生時代のクリスマスはよく覚えている。
12月になると、サンタクロースの正体をこの目におさめようと兄弟で作戦会議を始めた。
夕食を食べながら、
「きっと一階のベランダから入るはず!」
「ビデオカメラを棚の上に設置しとこう」
「いや、枕元のほうが確実に撮れる!」
などと真剣に会議をしていた。高学年になって、友達にサンタさんはいないよと言われても、いてほしいという希望を込めて「サンタさん見張り隊」を楽しんでいた。
中学生になって、サンタさんはいないことが確信に変わった。母親が手渡しで現金をくれたから。「サンタさんから笑」と一言添えて、笑。サンタクロースを信じていた頃も、正体を明かされた時も、すべての瞬間がいい思い出だ。
私はまだ未婚で子どももいないので、親になって迎えるクリスマスを密かに楽しみにしている。もしかしたらサンタさんがいるというのは嘘じゃないのかもしれない。24日の夜だけ、サンタさんはお母さんお父さんのコスプレをしてプレゼントを枕元に置いているのかも。