ササさん?
サッサさんです。
(2024/08/11・記)
場所、というものに何かが宿るのだとしたら。
その場所その瞬間が、すべてだとおもってはいるけれど。
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佐々さんを見たくて、ブレックスアリーナに行ったことはない。でも、宇都宮ブレックスを観に行けば、必ずそこに佐々さんは居た。わたしが見ていたブレックスのHCは、佐々宜央だった。
試合を観に行けば、バスケットLIVEを見ていれば、公式YouTubeの会見動画を見に行けば、佐々さんはそこに居た。いつの間にか応援していた宇都宮ブレックスに、HCの佐々宜央は居た。
だけどこの先、ブレックスアリーナに行っても、宇都宮ブレックスを見ても、もう佐々さんは居ない。彼を見に行きたいとか応援しに行きたいとか、そういう気持ちは相変わらずありはしないけれど、ただ、そこにはもう居ないのだという確かな未来だけが、どうしたって寂しい。
宇都宮へ、ブレックスアリーナへ行けばきっと、身を以て知るのだろう。あの日々は、終わってしまったのだと。
あの頃と変わらない場所で、それでも時は進み続ける。あの日から変わった現在や、これからの未来が流れている。
新シーズンに佐々さんが作るチームは、宇都宮ブレックスじゃない。それがどうしようもなく、今は寂しい。
たぶん、べつに、"特別なだれか" を見たくてブレックスアリーナに行っていたわけじゃない。
だれかがいなくて不安で、みんなが揃って心強くて、ミスをしまくったり負けそうになったり、時には圧勝したり、色んな試合を見てきた。
"特別なだれか" はいなかったけれど、でも同時に、だれもがみんな特別だった。それが「宇都宮ブレックス」だった。
試合を見ていたら、いつの間にか、彼らの目指す優勝を、それが叶うよう願っていた。気がついたら、応援していた。優勝するまで、共に戦えるとおもっていた。
あれから、もう何ヶ月経つんだろう。
彼らの最後の試合が終わる。夕刻の試合開始と共に降り出した雨は、その日1日が終わる瞬間までずっと、強く降り続いていた。
クォーターファイナルで宇都宮ブレックスを下した千葉ジェッツは、セミファイナルで琉球ゴールデンキングスに敗れた。
2年連続で決勝の舞台へと駒を進めたキングスはしかし、ファイナル第3戦でついに屈した。
優勝したのは、広島ドラゴンフライズだった。初優勝だった。
その間にも、それぞれのチームで契約終了が発表されていく。シーズン最後の月が終わる。
終わりは少しずつ告げられて、そのあとには新しいシーズンに向けての契約が続いていく。
個人練習が始まる。チーム練習が始まる。
そして新たなシーズンが、間もなく開幕する。
変わりゆくものを、愛せるだろうか。
愛さなきゃいけないともおもってはいないから、これからの身の置所はとくに決めてはいないけれど。
昨シーズンとは違うと、宇都宮ブレックスに限らずどのチームも違うのだと、頭でだけはわかっている。
それでも、昨シーズン、いつの間にか応援していたのは、優勝を願ったたったひとつのチームは、宇都宮ブレックスだった。たしかに彼らは、特別だった。
昨シーズンの感謝を込めて、勝手な礼儀を尽くして、今シーズンのいちばん初めは宇都宮に行くと決めている。
そこに行けば当たり前のように居た、宇都宮ブレックスHCの佐々宜央を目にすることは、もう決してないけれど。
何もかもが変わるわけじゃない。
これまでのチームカルチャーを受け継ぎながら、彼らは前へと進む。強くなるために、勝つために、今度こそ、優勝するために。
観に行けば、何かがわかるだろう。チームの現在も、自分の現在も。あの日から変わったもの、変わらないもの。これからの予感も、きっと。
過去を知るその場所からまた、知らない未来がひらけていく。佐々さんがこれまでに居た、そして今は居ない宇都宮の地から、いつだって、どこへだって行ける。