23-24シーズンのおもひで
アルバルク東京
(2024/07/09・記)
ファンだとは言えないけれど。
でも、ワタシがこよなく愛するマスコット、"ルーク"を擁するチームだ。いや、ルークはチームメイトではないから、擁してはいないか。いやいや、ルークだってチームメイトの一員だ、間違ってはいない。
とにかく、ルークのいる、東京の赤いチームだ。
ファンだとは言えないけれど、試合を観に行った回数に比例するのか、やはり観れば観るほど情は芽生えてくる。
自分は千葉県民だが、今シーズン、千葉ジェッツとアルバルク東京が戦った際には、容赦なくアルバルク東京を応援するような気もしている。
と、いうか、今シーズンを想定するまでもなく、昨シーズンに代々木第一体育館で行われた両者の試合ではアルバルク東京を応援していた。
ただ、これに関してはアルバルク東京のホームだったから、周りに合わせてアルバルク東京の応援をしてみただけとも言える。後ろの子どもたちはGO JETS! と声を張りあげて、全力で千葉ジェッツを応援していたが。
東京と千葉なんて隣だし交通の便もとても良いしお互いに人気チームだしで、アルバルク東京のホームとはいえ、ファンの数は半々くらいだったんじゃないか。
正直この日、どちらのチームを心から応援していたのか、もはや覚えていない。千葉ジェッツをどうしても観たくて行ったような気もするし(いかんせんチケットが取れない)、アルバルク東京を一度観てみたいという気軽な気持ちがあったような気もする。
そもそもこの日は、試合を観に行く予定ではなかった。試合時間と被ってないとはいえ既にイッコ予定が入っていたし、同じ週の水曜日にも試合を観ていたし、前の週にも観ていた。
さらに言えば、翌日には宇都宮での試合を控えていた。まるで自分が出るかのような口ぶりだが、もちろんそんなことはない。ただの、待ちに待った念願の、いつの間にか月に一回の恒例イベントとなっていた、宇都宮での試合観戦の日だ。
それなのになぜ観に行ったのかというと、妹からチケットを押しつけられたからだ。押しつけられたというのは語弊がある。押しつけられるまでもなく、チケットかぶっちゃったんだけど行かない?と聞かれた次の瞬間には、じゃあ行くよ!と当たり前のようにそのチケットを買い取っていた。
ちなみに、ワタシに2階自由席を売り飛ばした妹は、アリーナベンチ側(アウェー)の席を確保していた。
昨シーズンに観戦した試合の中で、あの席がいっっっちばんチームに、そして選手に近い席だった。猛者だ。今の自分ならともかく、当時は千葉ジェッツのベンチ裏など決して座りたくはなかった。いや、今でも、相手が千葉ジェッツであろうとなかろうと、アリーナベンチ側などなるべく座りたくはない。近すぎる。そもそも高くて座れないだろ、などというツッコミは2階席後方に投げ捨てておく。
あの日が、アルバルク東京を初めて観た日だ。
その日、アルバルク東京は千葉ジェッツに勝利した。
試合の記憶は、もうほぼなくなっている。なくなっていても、2階席から見ていたアリーナの光景はおもいだせる。ただ、それだけだ。
そうだ。あの日、勝って嬉しかったかはもう忘れてしまったけれど、落ち込んだ気分で帰ってはいなかった。きっといつの間にか、アルバルクを応援していたのだろう。
どちらを応援するかは、試合が教えてくれる。
✽ ✽ ✽ ✽
そのあと、ホームでまた、群馬クレインサンダーズとの試合を観た。
正直どっちも応援していた(群馬のほうが勝率は高くなかったので、わりと群馬を応援していた)けれど、アルバルク東京のホームだしエンド側(ホーム)の席だしで、見た目は全力でアルバルク東京を応援した。
アディダスの赤いチームTシャツも着たし、レッツゴートーキョー!も叫んだ。会場に染まるのは大事だ。それだけで士気が上がる。
試合は、前日にオーバータイムで競り負けたのは何だったんだというくらい、前半からアルバルクが圧倒した。既にほぼほぼ決着はついていた。終盤に群馬が怒濤の追い上げを見せたものの、タイムアウトを取ったアルバルクが持ち直して勝ち切った。
前半に20点も差がついていなければ接戦に持ち込めたのに…… とあの日はおもったけれど、今振り返れば、そもそも前半にそんな点差がついていなければ怒濤の追い上げタイムもなかったかもしれず、きっと全ては起こるべくして起こったのだろう。
次に何が起こるかなんて決してわからない。その瞬間に積み重ねられたひとつひとつが、次の展開へと繋がっていく。それが、あの日起こり得たすべてだった。
ちなみにこの時点で、アルバルク東京を観るのは3回目だった。
ホーム群馬戦の前にいちど、宇都宮でアルバルク東京を迎え撃っている。これまたまるで自分が戦ったかのように言っているが、もちろんただの、毎月恒例の、ワクワク宇都宮観戦だ。
その日は全力で、テーブス海にブーイングをした。ブーイングは敬意に比例するんだと、初めて知った瞬間だった。
彼のシュートがよく入るのは知っている。だから。
だからこそ絶対に、君にはシュートを決められたくない。
✽ ✽ ✽ ✽
そしてアルバルク東京は、東地区2位でレギュラーシーズンを終え、チャンピオンシップへと突入する。
チャンピオンシップ・クォーターファイナル。
アルバルクは大事な大事な初戦を、ダブルオーバータイムの末、僅か1点差で落とした。
残り9秒、琉球の絶対的エース・岸本隆一に得意のスリーポイントを撃ち抜かれ、逆転勝利を許したのだ。
衝撃だった。
負けたことが、ではない。逆転されたことが、でもない。
これほどまでに面白い試合があるのかと、初戦から延長に次ぐ延長、1点差での逆転勝利なんていう、こんなにもワクワクする試合があるのかと、それが衝撃だった。
ただただ、面白かった。これがチャンピオンシップか、と熱くなった頭はずっと興奮していた。
熱気そのままに、会場を出てすぐの道端で、暗がりのなか街灯に照らされたスマホをタップして、翌日の試合のチケットを購入した。
こんなところでやめられるはずがなかった。
こんな面白い試合の行く末を、最後まで見ずには終われない。
レッツゴートーキョー!を始めてしまったから。彼らが行くところまでを、共にしたい。彼らが行き着く先を、見なきゃいけない。
どちらを応援するかは、試合が教えてくれる。
正直、どっちが勝ってもいいとおもっていた。
ホームはアルバルクだったから、群馬戦の時に買った赤いTシャツを着て、レッツゴートーキョー!をしていたけれど、琉球も応援していた。
昨シーズン王者の琉球が、レギュラーシーズンでは期待されていたほどには勝利を積み重ねられず、天皇杯決勝では千葉ジェッツに惨敗し、最後は西地区首位の座も明け渡すなど、苦しんでここまで辿り着いたのは知っていた。王者のその姿は、少し意外だったけれど。
試合が終わった今だからわかる。
たぶん、琉球のことも、かなり応援していた。
指笛を響かせたり、桶さんボードを掲げたりすることはなかったけれど、ディーフェンス!と叫んだ直後に打てー!と小さく言ってしまうくらいにはきっと、応援していた。まぁ、指笛はそもそも吹けないけれども。
それでも3日間、全力でレッツゴートーキョー!と叫んだ。頑張ってくれと、活躍を願っていた。
その気持ちを込めて、レッツゴートーキョー!もディーフェンス!も、声の限り叫んだ。心の底から。
声には気持ちを込められるのだと、あの時知った。
2連戦から中1日を挟んで、チャンピオンシップ4日目の第3戦。
終盤に差し掛かった時点で、琉球が僅かにリードしていた。お互いのディフェンスが堅く、なかなか点が入らない。アルバルクは、追いつけそうで追いつけない。
刻一刻と終わりは迫る。この試合に勝った方が、次のセミファイナルへと進む。負ければここで終わりだ。今シーズンは終わり。このチームも終わり。
残り1分、4点差。
ミスターキングスこと岸本隆一にマークされた小酒部が、そのディフェンスを振り切って、左ウィングからスリーポイントシュートを放つ。
ピッという甲高い笛の音と共に、小酒部が後ろへ倒れ込む。彼の手から離れたボールは、岸本がめいっぱい伸ばした指先を超えて、そのまま、リングへと吸い込まれていった。
スリーポイント。バスケットカウント。
レッツゴートーキョー!という応援の声が、歓声へと変わり渦を巻く。小酒部ー!と彼の名を叫ぶ声、クラップを叩き鳴らす音が客席を覆い、コートへ降り注ぐ。
コートではアルバルクの選手たちが、立ち上がった小酒部の元に駆け寄って行く。
アリーナが歓喜に湧く中、彼は静かに、フリースローを1本沈めた。
ファウルを受けながらもスリーポイントを成功させ、フリースローも決めきる。試合で多く見られることはない、4点プレーだった。
57対57。
残り1分、同点。
土壇場で追いつかれた琉球は、それでもその後のオフェンスでファウルを受け、フリースローを獲得。2本の内1本を沈め、1点差で再び前に出る。
そして残り数秒を守り切って勝利。
琉球ゴールデンキングスが、セミファイナル進出を決めた。
この日、アルバルク東京は負けた。
アルバルク東京のひとシーズンが、終わった。
✽ ✽ ✽ ✽
チャンピオンシップは、面白かった。
レギュラーシーズンとチャンピオンシップは違う、と選手たちは口々に言っていたが、その意味を少しだけ感じられた気がした。
3戦ぜんぶ、どの試合も、最高に面白かった。
ひとつのチームに心を決めて、アリーナに観に行くんだ、絶対に最後まで観るんだと、気持ちをぜんぶ乗っけて声の限り応援した。
アルバルク東京と共に、初めてのチャンピオンシップを、全力で駆け抜けた。
ここで終わるだなんて、おもってはいなかったけれど。
チャンピオンシップは、セミファイナル、そしてファイナルへと、まだまだ続く。
たったひとつの優勝チームが決まる、その瞬間まで。
おもえばあの日、群馬との試合でレッツゴートーキョー!と初めて口にした時から、共に行く気持ちはもう、芽生えていたのかもしれない。
始めてしまったから。きっとそこで、始まってしまったから。
シーズンのすべてが終わった今振り返ってみると、アルバルクの試合を6試合観戦していた。
相変わらず、ファンだとは言えないけれど。
✽ ✽ ✽ ✽
おまけ
とにかく面白い試合が観たかった。
クォーターファイナルは、琉球が勝てば面白いなとおもってはいたさ。
宇都宮ブレックスvs.千葉ジェッツ以外は、アップセットを望んでいた。だってその方が、面白いから。
あのときは、決勝で宇都宮ブレックスvs.広島ドラゴンフライズを観たいな、なんて願っていた。
その願いはあの日、アルバルクが琉球に2勝目を献上したあの雨の日の夜、東地区首位かつリーグトップの勝率でチャンピオンシップに臨んだ宇都宮が、ワイルドカード2位でチャンピオンシップに滑り込んだ千葉にダブルオーバータイムの末破れた瞬間、ついえた。
アルバルクが負けたことよりも琉球が勝ったことよりも何よりも、宇都宮が負けたことが、宇都宮ブレックスをもう観られないということが、堪えたし信じられなかった。
ずっと観てきたのに。
セミファイナルだって、ホームに観に行こうとおもっていたのに。
簡単に勝てないのはわかっていた。
初戦が千葉ジェッツなのも怖かった。
それでも。優勝する瞬間を観れたらいいな、と他のどこでもない、宇都宮ブレックスに対して願っていた。
ぜんぶぜんぶ、叶わないんだ。
セミファイナルに行くのは、千葉ジェッツであって宇都宮ブレックスじゃない。
宇都宮の試合は、もう観れない。負けたから。
今のチームも、もう観れない。負けたから。
ここで終わり。
負ける瞬間は画面越しで観ていたはずなのに、どこか実感がない。実感はないけれど、頭ではわかっている。知っている。これでぜんぶ終わりだと。
ウソだろう?
なんでだよ、強かったじゃん、ずっと勝ってきたじゃん、目標は優勝って言ってたじゃん、といくら泣き叫んでも、叶わないものは叶わない。
93対103。
クォーターファイナル、敗退。
いつの間にか応援するようになっていたチームが、チャンピオンシップに出られるのは嬉しい。ものすごく嬉しい。
でも、優勝チーム以外は必ず、負けてシーズンを終えることになる。
どれだけ活躍しようと、どれだけ健闘しようと、どれだけ白熱する試合だろうと、最後に負けたというその事実だけは、どうしたって悔しい。
こうして、ひとつのチームのひとシーズンが、終わる。
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