柵を超えて伸びてきた菊
お話に出てくる台詞って、小さな滝みたいに目立たなくて、大概の人には死ぬほどつまらなくて、三秒で飽きてコーラに手が伸びるんだけど、少しの愉快さを感じれるってものが好き。それが良いよねって共感もできないもの。だけど一日中向き合ってさえいれば、湿原が徐々に海の方へ広がっていくもの。
例えばだよ。
「私はその国では、『アヒル』と呼ばれていました。鯨の目を左手に持つ男はそう答えました」とか「車椅子に乗った少年に、砂漠はどこに続いていると思いますか。そう尋ねられたの」とかね
「家系図を見てのお分かりの通り、私には五十才離れた妹がいます」といったような状況。
だってそんなこと私たちが聞いたって
ほとんど意味のないものだから
たぶん誰かがすごく遠くで叫んでいるんだけど
それはきっと誰にも届かない声で
すぐにどこかの穴に吸い込まれて
消えてなくなってしまう
暗闇で一人でしているお絵描き的世界みたいな
それがとにかく好き
売れなかったミュージシャン的世界
とでも言えるのかな
皮肉っぽく聞こえるけど
紐で繋がれた羊を眺めているみたいで
ほんとうに好き。