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ナンカンのスタッドレスって大丈夫? ブリザックって絶対王者なの?

Threadsでいっとき、冬道のクルマのブレーキの話が盛り上がってました。ABSとかポンピングブレーキとか、そういう話です。
でも、そんなこと言う前に、ブレーキがロックするまで踏めてないと色々始まらないんだよね。
でも、止まらなきゃ! ってときに、そこまで踏めてない人って、結構多いです。

もちろん冬道って、ロックする(ABSが作動する)ような運転をしないのが大事なんだけど、「ぶつかる!」みたいなヤバい時に、ロックするほど踏めてない人って、ほんと多いから。

あと、そもそも、ロックしてない領域でペダルをパカパカ、フニフニ踏むのはポンピングブレーキでもなんでもないです。


──なんてことをThreadsでアップしてたら「裏垢のクセにwww」みたいなこと書かれたわけです……まあ、しょうがない。普段は、ハプバーとかおちんちんとかそんなことばっかり言ってるアングラ垢なんだから。

……でも、サーキットでナンバー切ったクルマで遊んだりしてるんですけどね。


そして本題。スタッドレスタイヤの話です。


Threadsで、今度はナンカンのスタッドレスが話題になってます。ナンカンのアンバサダーみたいに絶賛してる人のポストが何十万回閲覧されて、何百件のイイネがついてる。

──ナンカン、そんなにいいのかな?

私は去年、ちょっとしたトラブル絡みで、ナンカン含めて国内外5社のスタッドレスを履いた車に、北海道で日常的に乗る機会がありました。まあ、色々面白かったです。
そのときの率直な感想を、書いてみようと思います。


まずは、ブリザック(VRX2)とダンロップ(WM02)の話から。

セイコーマートの駐車場で、アクアミサイルにぶつけられちゃった私のドイツのハッチバック。
修理の間の代車に、オリックスレンタカーからやってきたのがクラウン(4WD)でした。
最初に履いてたのがブリジストンで、ワイパーが動かなくなった(!)代車の代車にやってきた、同じクラウンの履いていたのがウインターマックス。
全く同じ車で、別のスタッドレスを比較できる、貴重な機会でした。

クラウンのLEDヘッドライトが、冬道で全然役に立たない! のは別の話だから置いといて──


ところが、ブリジストンVSダンロップは、比べる以前の問題でした。

国道の、緩い登り坂の交差点で、青信号からの発進で比較しただけでも、ブリザックはスムーズなのに、ウインターマックスはすぐにTRC(トラクションコントロールのトヨタでの呼び方)が介入してくるくらい滑る。それも、車体がブレるくらいに。
それだもの、ブレーキングの時も、VRXがまだまだ頑張ってくれるタイミングで、WMはさっさとABSが介入してくるわけです。

とりあえず、普通にまっすぐ走っている分には両車遜色なかったけれど……速度が上がってくると、そうもいきませんでした。ウインターマックス、ブリザックより圧倒的にウルサイ!
下道でもうるさいくらいだもの、高速道路を走ったりすると、ホワイトノイズ系の騒音が気になってしかたなかったです。
静かなしずかなクラウンでこれ! 設計思想的に? 走行音が飛び込みがちな欧州車だと、もっと酷いんだろうな。ウインターマックス、これだけでも積極的には選びたくないです。

サイドレターが当世風なのは、ブリザックVRX2のほう。


ここはやっぱり、ブリザック教が絶対だったのか? 結論から言うと、私は信者にはなれませんでした。

それやこれやで、ダンロップを圧倒していたブリジストンは、確かにアイスバーンや圧雪路面の発進はスムーズだし、圧倒的なブレーキ番長なんです。でも、それだけでした。
雪が積もりたてでフカフカの路面とか、融けてシャーベット状の路面、アスファルトの上にできた氷でゴリゴリの轍、山の温泉のロクに除雪してない駐車場のザクザクでゴリゴリの雪……みたいなシチュでは、とにかくハンドリングが悪いんです。ステアリング操作への応答性が鈍いし、まっすぐ進んでくれない。

トーヨー・ガリットG5は、トレッド面のセンター部分のパターンが特徴的。


比較対象は、私がそのとき自分のクルマで履いていたトーヨーのガリット(G5)と、それまで履く機会の多かったミシュランのX-ICEです。

たしかに、アイスバーンや圧雪路面のブレーキの効きは圧倒的です。それは凄い。
性能的にブレーキが効きます、って一点突破をしてて、それをマーケティングでも最大限活用して、消費者もそこで選択してる。
しかし、ステアリングの応答性では、ミシュランやトーヨーの方が、あきらかにリニアに言うことを聞いてくれます。

積極的な運転をしなかったり、遠出をしなかったりで、最近の自動車のパッシブセイフティの恩恵を十二分に受けられる範囲でしか運転しないドライバーには、ブリジストンはベターな選択だと思います。
でも、ハンドリングなどのアクティブセイフティを考えたとき、ブリザックが充分に応えてくれない場面があるのもまた、事実です。
あと、ブレーキの効きと引き換えに当然のようにコンパウンドが柔らかい。長持ちとドライ性能を考えたとき、そこも引っかかる。

私は、高速道路もガンガン乗るし、ドカ雪のタイミングでは宿に辿り着けない人が出るような山の温泉も大好きだし、最後の雪を心配して履き替えを遅らせがちだったりするので──といったいくつかの要素から、ブリザックは積極的には選べません。

ただ、ブリザック、ブレーキ性能や発進性能は抜群です。それだけは他のメーカーが束になっても敵わないでしょう。
でも、お値段も抜群ですよね……そこもまた、ブリザックの弱点だと思います。


さて、最後にナンカンの話。

というわけで私のハッチバック、スタッドレスはトーヨーを履いていたんだけど、板金から帰ってきたあと、新品のナンカンを履くことになりました。

知り合いのプリウスが冬に入る前に事故で全損になっちゃって、そのシーズン履くつもりだった新品が浮いちゃってたのを譲ってもらったんです。全く同じサイズだったのは驚いたけど。

AW-1のトレッド面。サイプ(細い溝)の入れ方にしても、かなりの本気度がうかがえます。

ナンカンのAW-1は、見た目もゴムの柔らかさも、なんだか色々ブリザックっぽい印象でした。
結論としても、古田織部的に言うと、AW-1は「乙なブリザック」でした。
いいところはある。でも、突き詰めたとき、「ジェネリックブリザック」という印象は、最後まで拭えなかったです。

ナンカンのスタッドレスはおそらく、ブリザックをターゲットモデルにしているのでしょう。アイスバーンや圧雪路面のブレーキ性能に、最適化している印象がありました。
たしかに、赤信号でなかなかいい感じに止まってくれる。
でも、そこはジェネリックの悲しさ、ブレーキの限界は全然手前にあります。赤信号の減速時にもすぐABSが動き出すので「え!?」となっちゃう。

「ブレーキ性能ではナンカンの方がブリザックより上」というデータを出しているYouTuberが話題だそうですけれど、制動距離だけなら、そういう結果が出る状況もあるかもしれません。そう思えるくらいには、AW-1はいい感じです。
ただ、ロックするまでの領域。ABSが効いてからではなく、ブレーキの踏み始めからロック(ABS作動)までのコントロール性は、あきらかにブリザックに劣ります。そもそもABSの介入が早い!

そして、ブリザックと圧倒的に違うのは、ロードノイズです。
とにかくうるさい! ダンロップどころじゃなく、走ってる間中ノイズが盛大に発生してます。特にホワイトノイズ系が酷くて、耳に張りつきます。
高速道路では、カーオーディオに影響するレベルで耳障りです。これでは長時間のドライブは厳しいです。

さらに、ジェネリックですから、ブリザックの弱点は、もっと弱点になっているわけです。

轍、帯広や函館レベルにゴリゴリじゃなくても、凍ってガチガチになってる交差点の、数センチの低い轍でも、簡単に左右に蹴飛ばされます。

フカフカの雪道、設置感が乏しくて、どっちに進んでいるかわかりません。

──あるとき、心が折れました。

途中から大吹雪になったコストコに行く道のホワイトアウト。除雪も間に合ってない道央圏連絡道路は、圧雪の上に轍、轍、深雪……こういうシチュ、正直ブリザックは苦手です。ナンカンはもっと苦手でした。なんていうか、いいところもあるんだけど、ダメなところもそのまま共有してる兄弟って感じです。

──もう止めます。私には向いてない。

コストコに着いたら、買い物の前にタイヤセンターに直行しました。さすがはプリウスサイズ、シーズンに入ってたけど、在庫がありました。
履き替えたのは、ミシュランの現行モデルのX-ICE SNOWです。

X-ICE SNOWは、サイプを持たないデザインが特徴的です(プリウスサイズではありません)

ミシュラン、正直、アイスバーンでのブレーキ性能はブリザックにかないません。
例えば、オホーツクの海沿いの夜の交差点なんて、青信号の発進の度にシュルシュル言い出しちゃう。
正直、ナンカンにも負けるシチュエーションはあるかもしれない。オホーツクの夜道にしても、都会の交差点のミラーバーンの停止や発進とか。

でも、X-ICEは高速道路でも静かだし、諸々のシチュで真っ直ぐまっすぐ走ってくれる。走ってて、操ってて、安心なんです。接地感、剛性感が高い。轍に蹴っ飛ばされたりしないし、ハイドロプレーニングでも冷や冷やしない。
すすきのの肉まん屋さんの前の東西の道、凸凹のクロスカントリーで、踏ん張りきれずにマンホールの穴に落ちたりしない(ブリザックで落ちました。ナンカンだともっと弱いと思います)

最終的には、好みの問題でしょう。

どうしてもブレーキ性能を譲れない人なら、ブリザックや、ジェネリックブリザックとしてのナンカンが賢明な選択です。
でも、スタッドレスに求められる性能の各要素を多角形のグラフにしたとき、円に近いのは、面積が大きいのは、ブリザックよりもミシュランだろうし、ナンカンはひどく歪になるんじゃないかな。

とはいえナンカンも、なかなかよかったです、乙なスタッドレスでした。

私も、軽自動車とかコンパクトカーで、通勤と近所の買い物に行くのがメインみたいな使い方だったら、積極的にナンカンを選ぶかもしれないです。
特に、コストパフォーマンスは極めて魅力的です。

でも、高速道路もガンガン使うので、あの騒音はちょっと無理でした。ダンロップもうるさかったけれど、比較にならないくらいにホワイトノイズがひどい。下道を走っている速度域でも耳に張りつきます。
それに、除雪の終わってない時間帯から、パフを目指してスキー場に行ったりするから、深雪性能の不安は避けたいです。
おまけに、突然帯広にばんえい競馬を見に行きたくなったりするから、交差点の度に氷の轍に蹴飛ばされるのは怖いです。

結局、どんな車をどんなふうに使うのかで、何もかも変わってくると思います。

「いやー、俺たち、あんたたち生まれる前の全然効かないスタッドレスも履いてたんだわ。今のならなんでも効くしょ。
どんなスタッドレスでも、スピード出したらブレーキ踏んでもワヤだし、雪山ハマったらスコップつかわないと、出られないさ」

道産子のベテランドライバーさんに言われました。
最後は、スタッドレスの性能よりも、一人ひとりのドライバーが、どれだけ安全運転をするかにかかっていることを、あらためて思い出したところです。

それでは、雪国のドライバーさん、スコップ積んで、ブースターケーブルも積んで、今日もご安全に!

──最後まで読んでいただいてありがとうございました。
普段は、このマガジンにまとめたようなnoteを書いてるアングラ垢です。
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山田 葉月
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