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ともす横丁 Vol.5 父の好物

娘が明日、帰ってくるという。帰るときはいつも突然だ。小さい頃からの悪ガキ三人娘と遊ぶらしい。聞いてみれば、中学時代の同級生〇〇が出産したらしく、そのお祝いを長島のアウトレットまで買いに行くのだという。

悪ガキ三人娘は、保育園の頃からのつきあいだ。娘は保育園から帰ると実家にいて、近所に住む同級生の〇〇ちゃんのうちに入り浸り。おうちが英会話教室をやっていて、とてもオープンな家庭。夫曰く娘は「住み込みの人」みたいにいつも一緒に遊んでいた。〇〇ちゃんは自由で野性味があって、人生どうでも好きに生きていけばいいじゃん!って全身で表現してる感じ。娘はどちらかというと物静かで控えめ。そこにもうひとり加わって、さらに勢いがついた。そのまんま表現するふたりとはちょっとタイプが違う。ふたりがケンカしだすと静かに見守る感じ。きっと三人のバランスが絶妙なのだろう。

それぞれ進んだ高校は違い、その後も就職したり進学したり全く共通項はないのに何かと言うと集結している。〇〇ちゃんちでバーベキューやるからと突然帰ってくることもある。もう一軒うちがあるみたいだ。だからといって、親同士が入るわけでもない。ただ見守っている。

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そんな友人たちとともに育った娘は、むき出しの感情を見せることが少なく、この子に感情は育ってるのだろうかと心配になった時があった。幼い頃の活発さや自由闊達な友人たちとのやりとりを見ていると、この子は何か眠らせているかもしれないと思う。安心できるところにいたいのかもしれない。いずれこの世界がとても愉快でおもしろいところだと信頼できたら、何か変わるのか。それがいいのか、そうなのかもわからない。私はただ、自分の信じるところを生きて後ろ姿で示していたい。どうするかは娘次第だ。

長島から帰った娘は、「途中ね、納谷橋饅頭見つけたの。おじいちゃんが好きだったなって思って買ってきたよ。もう渡してきた。」という。父はとても喜んでいたと母から何度も聞いた。

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