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ともす横丁 Vol.4 幼い頃のお手伝い

母が着物を譲りたいと言う。わからなくならないうちに渡したいのだと。切なさを胸に抱え、実家に向かう。着物にまつわる思い出を聞きながら、これらの着物は母の人生そのものだ、と思う。

私が好きだった母の着物とお揃いの布バッグには、私の小学校入学式の案内が入っていた。なぜにこんなとこに??と謎だけれど、母にとっても大切な思い出だったのか。捨てられなかったのかもしれない。そこにある母の子どもたちへの想いが透けて見えるようで、愛おしくなる。

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そのあと、母から車庫にある段ボールを片付けてほしいと言われる。見てみると段ボールが山になっている。どうしようもなくしばらく放置していたと思われる。そうか、こんなことも今のふたりには難しいことになったんだと思い知らされる気分になる。他にもそのようなことがあるかもしれないとか、人に頼まないとできないってどんな気持ちなんだろうとかあれこれ頭の中に浮かぶが、わかろうと努めても今の私には推測に過ぎない。やるせない気持ちになりながら、30分もせずに紐でしばり、そこらを片付けた。あとは近くのリサイクルセンターに車で運ぶだけ。

そこで、ふと車庫を見まわすとあちこちにほこりが目についた。すぐそばに箒があり、掃き掃除しようと思い立つ。扉を開けて風を通し、ひとしきり車庫の中を掃く。ああそういえば、幼い頃、母から車庫の掃き掃除を頼まれてたなあと思い出す。身についていたんだ。だから、きっと考えもせずに体が動いたんだ。すっきり気持ちがいい。あの状況は、さぞかし気になっていたことだろう。掃除してほしいと言い出しにくかったのかもしれない。

私が片付けている間、両親は昼寝していた。着物の整理で疲れているだろうから寝ている間に行くからいいよと言って、その言葉どおりにリサイクルセンターへ運んだ。昼寝から起きた両親は、掃かれて綺麗になった車庫を見て、殊の外喜んでくれた。よほどうれしかったらしく、わざわざ電話してきた母に「小さい頃のお手伝いを思い出したからだよ。」と言うと、電話の向こうでうれしそうに笑った。

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